男性長距離走選手の厚底シューズの着用がランニング障害に及ぼす影響

〔要旨〕(目的)男性長距離走選手における厚底シューズの着用率, ランニング障害の実態, 厚底シューズがランニング障害に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした. (方法)質問紙にて, 厚底シューズの着用経験と着用期間, 厚底シューズ着用時のランニング障害の既往および発生部位を調査した. 障害の定義は, 2週間以上ランニングを中断あるいは制限した下肢の損傷とした. 厚底シューズ着用経験者における厚底シューズ着用の有無と1年あたりのランニング障害発生数の関連を対応のあるt検定を用いて解析した. (結果および考察)有効回答数445名(31.2%)を分析対象とした. 厚底シューズ着用経験者は408名(...

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Published in日本臨床スポーツ医学会誌 Vol. 30; no. 3; pp. 758 - 763
Main Authors 植山剛裕, 筒井俊春, 上久保利直, 後藤晴彦, 鳥居俊
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床スポーツ医学会 31.08.2022
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ISSN1346-4159

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Summary:〔要旨〕(目的)男性長距離走選手における厚底シューズの着用率, ランニング障害の実態, 厚底シューズがランニング障害に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした. (方法)質問紙にて, 厚底シューズの着用経験と着用期間, 厚底シューズ着用時のランニング障害の既往および発生部位を調査した. 障害の定義は, 2週間以上ランニングを中断あるいは制限した下肢の損傷とした. 厚底シューズ着用経験者における厚底シューズ着用の有無と1年あたりのランニング障害発生数の関連を対応のあるt検定を用いて解析した. (結果および考察)有効回答数445名(31.2%)を分析対象とした. 厚底シューズ着用経験者は408名(91.7%)であり, 厚底シューズ着用経験者におけるランニング障害の既往は298名(73.0%)であった. さらにt検定の結果, 厚底シューズの着用により臀部, 股関節, 大腿, 膝関節, 下腿, アキレス腱, 足関節, 足部の障害の発生が有意に増大していた(p<0.05). また, 厚底シューズ着用期間外に対する着用期間内のランニング障害発生率の比を部位ごとに検討した結果, 股関節の障害発生数の増加が他の部位より大きかった. 厚底シューズは走行時のエネルギー効率を向上させると言われている. 効率的なランニング動作には骨盤の制動が重要であることを踏まえると, 従来型シューズから厚底シューズへの移行は, 股関節障害の発生リスクを増加させる可能性がある.
ISSN:1346-4159