結核低蔓延地域における網羅的な結核菌反復配列多型 (VNTR) 分析の有用性

「要旨」: 〔目的〕国内の結核低蔓延地域において結核菌VNTR分析を広範に実施し, 低蔓延下の結核対策における同分析の有用性を明らかにする. 〔方法〕2009~2011年に山形県内で新規登録された菌陽性肺結核患者266人中184人(69.2%)から分離された結核菌の24領域VNTR分析を実施した. VNTRパターンが23領域以上一致した菌株を同一クラスタと定義し, 各クラスタの由来患者間の関連性の有無を実地疫学調査結果から検証した. 〔結果〕184株中49株(26.6%)が17クラスタを形成した. 関連性がある事例として, 6クラスタ内に院内感染3事例, 家族内感染3事例, 施設内感染1事例を...

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Published in結核 Vol. 88; no. 6; pp. 535 - 542
Main Authors 瀬戸順次, 阿彦忠之, 和田崇之, 長谷篤, 山田敬子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本結核病学会 15.06.2013
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Summary:「要旨」: 〔目的〕国内の結核低蔓延地域において結核菌VNTR分析を広範に実施し, 低蔓延下の結核対策における同分析の有用性を明らかにする. 〔方法〕2009~2011年に山形県内で新規登録された菌陽性肺結核患者266人中184人(69.2%)から分離された結核菌の24領域VNTR分析を実施した. VNTRパターンが23領域以上一致した菌株を同一クラスタと定義し, 各クラスタの由来患者間の関連性の有無を実地疫学調査結果から検証した. 〔結果〕184株中49株(26.6%)が17クラスタを形成した. 関連性がある事例として, 6クラスタ内に院内感染3事例, 家族内感染3事例, 施設内感染1事例を見出した. このうち, 院内感染, 施設内感染各1事例ではVNTR分析により未知の伝播が明らかにされた. 最大クラスタ(12株)のVNTRパターンは, 2007年発端の集団感染事例の初発患者パターンと一致した. 〔考察〕結核低蔓延地域では, 広く収集した患者由来菌株のVNTR分析と実地疫学調査の結果を組み合わせることで, 未知の感染伝播の発見, 新たな感染リスク集団の探知, および集団感染の追跡に役立つなど, VNTR分析の高い有用性が確認された.
ISSN:0022-9776