非感染性疾患 (Non-Communicable Diseases) と肺結核治療成績

要旨: [目的] 日本は高齢化の進んだ社会で, 新登録結核患者の半数は70歳以上である. 非感染性疾患 (NCDs) は活動性結核を発症するリスク因子である. 私たちは, 新登録喀痰塗抹陽性肺結核患者の治療成果を集積し, NCDsと加齢が治療成績に及ぼす影響について分析した. [対象と方法] 2007年から2012年の間に国立病院機構千葉東病院に入院した初回治療者618名を対象とした. [結果] 70歳以上は219名 (35%) であった. ひとつでもNCDsを有している患者は525名であった. 70歳未満でNCDsを有する患者は80.5%であったが, 70歳以上では93.2%と有意に高くなっ...

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Published in結核 Vol. 93; no. 1; pp. 25 - 33
Main Authors 猪狩英俊, 石川哲, 高柳晋, 山岸一貴, 野口直子, 永吉優, 水野里子, 山岸文雄
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本結核病学会 01.01.2018
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ISSN0022-9776

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Summary:要旨: [目的] 日本は高齢化の進んだ社会で, 新登録結核患者の半数は70歳以上である. 非感染性疾患 (NCDs) は活動性結核を発症するリスク因子である. 私たちは, 新登録喀痰塗抹陽性肺結核患者の治療成果を集積し, NCDsと加齢が治療成績に及ぼす影響について分析した. [対象と方法] 2007年から2012年の間に国立病院機構千葉東病院に入院した初回治療者618名を対象とした. [結果] 70歳以上は219名 (35%) であった. ひとつでもNCDsを有している患者は525名であった. 70歳未満でNCDsを有する患者は80.5%であったが, 70歳以上では93.2%と有意に高くなった. 多変量解析の結果, 治療成功の独立因子は, 血清アルブミン<2.5mg/dL (調整オッズ比 [aOR] : 0.4, 95%信頼区間 [95%CI] : 0.2_0.7),心臓血管疾患 (aOR:0.4, 95%CI:0.2_0.96), 免疫抑制剤による治療を要する疾患 (aOR:0.4, 95%CI:0.2_0.9) であった. 死亡の独立因子は, 70歳以上 (aOR:4.7, 95%CI:2.3_9.7), 血清アルブミン<2.5mg/dL (aOR:3.1, 95%CI:1.5_6.3), 悪性疾患 (aOR:8.7, 95%CI:3.6_21), 心臓血管疾患 (aOR:2.7, 95%CI:1.1_6.6) であった. 入院時呼吸不全, PS (パフォーマンスステータス) (3または4), 標準治療の完遂は, 治療成功と死亡の独立因子であり, NCDsと交絡することが示された. [考察] NCDsと加齢は治療成績を悪化させる要因になることが示された. 今後10年間に, 日本と同様に高齢化が進行する国が増えてくることが予想される. 高齢化社会においてNCDsは, 結核対策のもう一つの課題になる可能性がある.
ISSN:0022-9776