運動負荷心エコー法による老齢者の心機能に関する研究 健康老齢者の心収縮能について
老齢者における運動耐容量の低下が指摘され, その一要因として心収縮能低下が想定されている. しかしながら老齢者の心収縮能に関しては詳細な報告に乏しく, 特にこれは潜在性心病変の存在を検出することに困難さがあると同時にその対照となるべき健康老齢者を選択する基準に問題が残りいまだ解決されていない. 本研究では一定条件で選択した健康若年者29名および老齢者18名を対象とし, 運動負荷心エコー法をおこない, その駆出期心機能指標から心収縮能を比較検討した. すなわち, 十分な安静仰臥位をとらせた後, 多段階式仰臥位自転車エルゴメーター負荷を課し, 75Watt 負荷時の恒常状態で心エコー図および頚動脈...
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Published in | 日本老年医学会雑誌 Vol. 18; no. 2; pp. 88 - 96 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本老年医学会
01.03.1981
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ISSN | 0300-9173 |
DOI | 10.3143/geriatrics.18.88 |
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Summary: | 老齢者における運動耐容量の低下が指摘され, その一要因として心収縮能低下が想定されている. しかしながら老齢者の心収縮能に関しては詳細な報告に乏しく, 特にこれは潜在性心病変の存在を検出することに困難さがあると同時にその対照となるべき健康老齢者を選択する基準に問題が残りいまだ解決されていない. 本研究では一定条件で選択した健康若年者29名および老齢者18名を対象とし, 運動負荷心エコー法をおこない, その駆出期心機能指標から心収縮能を比較検討した. すなわち, 十分な安静仰臥位をとらせた後, 多段階式仰臥位自転車エルゴメーター負荷を課し, 75Watt 負荷時の恒常状態で心エコー図および頚動脈波の同時記録をおこない駆出期諸指標を測定・算出し, 安静時の値と比較した. 脈拍数および全末梢血管抵抗は負荷前値および負荷に対する反応に若年群と差を認めなかった. 一方, 収縮期および拡張期血圧は負荷前値では両群間に差を認めなかったが, 負荷により老齢群で上昇が大であった (p<0.01). 心収縮力に関する諸指標では, 負荷前 stroke dimension (SD)・mean rate of circumferential fiber shortening (VCF) は両群間に差を認めなかったが, normalized VCF・ejection fraction (EF) は老齢群で低値を示した (p<0.01). しかしながらこの normalized VCF・EF は left ventricular end-diastolic dimension (D) と負の相関を示し, Dによる補正値を求めて比較すると両者とも両群間には差が認められなかった. また運動負荷によりこれら4つの駆出期心機能指標は両群のいずれでも有意に増加したが, その増加度は老齢群でより顕著であった (p<0.05~0.01). この結果, 負荷時の値としては normalized VCF・EF は両群間に有意差はなかった. 以上より, 一定の条件で選択された健康な老齢者では心収縮力の低下はないことが示唆され, これらの結果は今後健康老齢者と潜在性心病変を有する老齢者とを鑑別するうえでも有用と思われた. |
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ISSN: | 0300-9173 |
DOI: | 10.3143/geriatrics.18.88 |