下歯槽神経切断後におこる有髄求心神経線維軸索の三叉神経感覚核内での分布範囲の変化

近年, 野村らはラットの下歯槽神経切断後に眼下窩神経支配領域である口ひげ部の1g以下の触刺激に対して逃避行動を示し, 痛覚過敏が神経切断より15日まで惹起されることを報告した. このような痛覚過敏の発現のメカニズムとして三叉神経感覚核内での求心性有髄神経の軸索発芽について調べた. 実験には7週齢のSD系雄性ラットを用いた. ネンブタール麻酔下で, 左側下歯槽神経を露出し, 6.0の絹糸で2箇所結紮し, その間を切断した. 切断1週間後に再度麻酔下し, 切断端より2~3mm中枢の神経束にCTBを40μl加圧により注入した. 注入1週間後に, 深く麻酔し灌流固定した. 非切断動物の左側下歯槽神経に...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in歯科基礎医学会雑誌 Vol. 42; no. 5; p. 467
Main Authors 呉軍, 坪井美行, 角野隆二
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 歯科基礎医学会 30.08.2000
Japanese Association for Oral Biology
Online AccessGet full text
ISSN0385-0137

Cover

More Information
Summary:近年, 野村らはラットの下歯槽神経切断後に眼下窩神経支配領域である口ひげ部の1g以下の触刺激に対して逃避行動を示し, 痛覚過敏が神経切断より15日まで惹起されることを報告した. このような痛覚過敏の発現のメカニズムとして三叉神経感覚核内での求心性有髄神経の軸索発芽について調べた. 実験には7週齢のSD系雄性ラットを用いた. ネンブタール麻酔下で, 左側下歯槽神経を露出し, 6.0の絹糸で2箇所結紮し, その間を切断した. 切断1週間後に再度麻酔下し, 切断端より2~3mm中枢の神経束にCTBを40μl加圧により注入した. 注入1週間後に, 深く麻酔し灌流固定した. 非切断動物の左側下歯槽神経にも同様にCTBを注入し1週間後に灌流固定した. 連続切片を作成しCTBに対する免疫反応を行い, CTB陽性線維および終末を可視化した. 上三叉神経核, 三叉神経主知覚核, 三叉神経脊髄路核吻側および中間亜核でのCTB陽性線維および終末の分布範囲には大きな違いはなかった. 三叉神経脊髄路核尾側亜核(SPVC)では, 非切断動物のII層にはCTB陽性線維および終末は認められなかったが, 切断動物のII層にはCTB陽性線維および終末が多く認められた. 切断動物のSPVCでは, I層のCTB陽性線維および終末は外側に拡がっていました. 以上のことから, SPVCのIとII層への有髄神経線維の発芽が, 神経切断による神経損傷時に起る痛覚過敏発現に関与している可能性が示唆された.
ISSN:0385-0137