ハンセン病患者における日常生活満足度について

【はじめに】ハンセン病患者の多くは発症から50年以上経過している. そのほとんどの人が発症後まもなくから現在まで療養所内で生活しているというのが現状である. その経緯は, 法的な隔離政策に始まるが, らい予防法が廃止された現在でも療養所生活を送っている背景には, 医学的な理由だけでなく, 社会的な理由, 更に患者の高齢化により, 社会復帰が困難となっていることが考えられる. このように長期療養を余儀なくされた患者において, 我々リハビリテーションスタッフとしてQOLの向上を考えることは重要である. 今回我々は, 一国立ハンセン病療養所入所者を対象とし, 日常生活満足度の実態を明らかにし, 一般...

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Published in日本ハンセン病学会雑誌 Vol. 69; no. 1; p. 48
Main Authors 小池舞, 澤美智子, 青木主税, 篠原久子, 山口猛, 松井高之, 塚本達郎, 小松彦太郎, 東正明, 中村光伸
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本ハンセン病学会 01.03.2000
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ISSN1342-3681

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Summary:【はじめに】ハンセン病患者の多くは発症から50年以上経過している. そのほとんどの人が発症後まもなくから現在まで療養所内で生活しているというのが現状である. その経緯は, 法的な隔離政策に始まるが, らい予防法が廃止された現在でも療養所生活を送っている背景には, 医学的な理由だけでなく, 社会的な理由, 更に患者の高齢化により, 社会復帰が困難となっていることが考えられる. このように長期療養を余儀なくされた患者において, 我々リハビリテーションスタッフとしてQOLの向上を考えることは重要である. 今回我々は, 一国立ハンセン病療養所入所者を対象とし, 日常生活満足度の実態を明らかにし, 一般の施設(老人保健施設)入所者, 在宅老人と比較検討したので報告する. 【対象及び方法】1)対象 国立ハンセン病療養所栗生楽泉園に入所しているハンセン病患者50名(男性31名, 女性19名), 平均年齢は76.3±5.6歳であった. 2)質問紙票の作成 大川らによる日常生活満足度表, 栗原らによるがん薬物療法におけるQOL調査票を参考にし, ハンセン病患者の日常生活満足度を, (1)基本的欲求レベル(9項目), (2)生きがいに関するもの(3項目), (3)社会レベル(4項目), (4)障害, 体の機能に対する受容に関するもの(2項目), (5)現在, (6)将来への不安(各1項目)の20項目を作成した. それぞれの回答は, 5段階とした. 3)評価方法について質問紙表を用い, 日常生活に関する20項目について個別面接調査を行った. 比較対象群として, 老人保健施設入所者50名, 一般の在宅老人50名について同様に調査を行った. 【結果】(1)~(6)は方法の2)に対応させた. (1)ハンセン病患者, 老人保健施設入所者(以下老健), 在宅老人の3群間に有意差は見られなかった. (2)p<0.01でハンセン病患者の方が, 老健よりも有意に高得点を示した. (3)p<0.01でハンセン病患者, 老健, 在宅老人の順に高得点を示した. (4)ハンセン病患者, 老健間に有意差はみられず, ハンセン病患者, 在宅老人間ではp<0.05でハンセン病患者の方が高得点であった. (5)(6)については検討中である. 【考察】ハンセン病患者では, 生きがいや社会活動, 障害受容に関する項目で高い満足度を示した. この理由として, 周囲の比較する対象が同様にハンセン病患者であること, 信仰宗教がある患者が大部分であることが影響していると考えた.
ISSN:1342-3681