インプラント体周囲粘膜上皮の形成過程におけるラミニン5の発現

【目的】歯科インプラント処置は不可欠な歯の欠損治療だが, 口腔粘膜貫通部位の上皮-インプラント(Imp)界面構造は不明である. 本研究では, Imp周囲粘膜の基底膜成分ラミニン5(L5)の発現を経時的に観察し, Imp周囲の上皮性接着の形成過程/接着構造物を解析した. 【方法】ラット上顎第1臼歯を抜歯後, Impを埋入した. 1, 3日, 2, 4週後に固定し, Imp周囲頬側粘膜でのL5の局在を光顕的, 電顕的に観察した. 正常歯肉でのL5の局在も検討した. 【結果】光顕では, 正常歯肉上皮-結合組織/エナメル質界面にL5が局在していた. Imp周囲粘膜の経時的観察では, 1日後のL5は上皮...

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Published in歯科基礎医学会雑誌 Vol. 44; no. 5; p. 391
Main Authors 熱田生, 山座孝義, 吉成正雄, 白岩昌, 室谷春江, 城戸瑞穂, 寺田善博, 田中輝男
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 歯科基礎医学会 20.09.2002
Japanese Association for Oral Biology
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ISSN0385-0137

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Summary:【目的】歯科インプラント処置は不可欠な歯の欠損治療だが, 口腔粘膜貫通部位の上皮-インプラント(Imp)界面構造は不明である. 本研究では, Imp周囲粘膜の基底膜成分ラミニン5(L5)の発現を経時的に観察し, Imp周囲の上皮性接着の形成過程/接着構造物を解析した. 【方法】ラット上顎第1臼歯を抜歯後, Impを埋入した. 1, 3日, 2, 4週後に固定し, Imp周囲頬側粘膜でのL5の局在を光顕的, 電顕的に観察した. 正常歯肉でのL5の局在も検討した. 【結果】光顕では, 正常歯肉上皮-結合組織/エナメル質界面にL5が局在していた. Imp周囲粘膜の経時的観察では, 1日後のL5は上皮-結合組織界面のみに認められた. 3日目ではImp表面に沿った上皮の深部増殖が観察され, 増殖先端部周囲組織にL5が散在していた. 2週後ではImp界面にもL5が顕著に分布していた. 4週後Imp周囲粘膜は正常歯肉に類似した形態学的特徴を呈し, Imp界面全体にL5が認められた. 電顕観察では, Imp周囲上皮細胞は付着上皮細胞と類似し, 上皮細胞-Imp界面のL5局在は, 上皮下部では内側基底板(IBL)様構造として認められたが, 上部では基底板様を呈さず, Imp上の沈着として観察された. また外側基底板では, L5の沈着が帯状に広く認められた. 【考察】Imp周囲粘膜上皮の形成過程での発現様式から, L5による上皮誘導が考えられた. また, L5はImp周囲上皮でのIBLによる生物学的封鎖への関与も示唆された.
ISSN:0385-0137