膜性腎症の発症メカニズム 原因抗原とIgG4関連自己免疫疾患としての考察

要旨:膜性腎症は糸球体係蹄壁の上皮下に沈着する免疫複合物が,補体活性化などを介して濾過バリアを傷害し,高度蛋白尿をきたす免疫疾患である。最近,病理組織切片にレーザーマイクロダイセクション・液体クロマトグラフィー・質量分析法(LMD-LCMS/MS法)の技術が応用され,この疾患の原因抗原が次々と解明されている。その結果,膜性腎症のおよそ70%の原因抗原であるphospholipase A2 receptor(PLA2R)をはじめ,多くの原因抗原が糸球体足細胞(ポドサイト)に発現している蛋白であることが明らかとなった。また,血中に対応する自己抗体が検出されることから,膜性腎症はポドサイトに対する自...

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Published in診断病理 Vol. 42; no. 2; pp. 93 - 102
Main Authors 川西, 邦夫, 康, 徳東, 本田, 一穂
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本病理学会 2025
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ISSN1345-6431
2759-8128
DOI10.69281/jspjjdp.2024_11_0045

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Summary:要旨:膜性腎症は糸球体係蹄壁の上皮下に沈着する免疫複合物が,補体活性化などを介して濾過バリアを傷害し,高度蛋白尿をきたす免疫疾患である。最近,病理組織切片にレーザーマイクロダイセクション・液体クロマトグラフィー・質量分析法(LMD-LCMS/MS法)の技術が応用され,この疾患の原因抗原が次々と解明されている。その結果,膜性腎症のおよそ70%の原因抗原であるphospholipase A2 receptor(PLA2R)をはじめ,多くの原因抗原が糸球体足細胞(ポドサイト)に発現している蛋白であることが明らかとなった。また,血中に対応する自己抗体が検出されることから,膜性腎症はポドサイトに対する自己免疫疾患と理解されている。一方,自己抗体のサブクラスが主としてIgG4であることから,本疾患を IgG4関連自己免疫疾患の一つととらえることもできる。従来,特発性と続発性に分類されていた膜性腎症は,原因抗原を特定することが診断の要となり,原因抗原とIgG4免疫応答に基づいた病態の解明と治療の選択が始まっている。
ISSN:1345-6431
2759-8128
DOI:10.69281/jspjjdp.2024_11_0045