ベッドサイドで想定される清潔間欠導尿用カテーテルの細菌汚染と消毒効果の検討

「要旨」脊髄損傷患者は神経因性膀胱を随伴し, ケース付きカテーテルを使用した清潔間欠導尿が選択される場合が多く, 尿路感染の合併予防にはカテーテルの消毒・保管方法が重要である. 上肢や手指の機能不全がある場合, ベッド上のリネン等を介したカテーテルの細菌汚染の危険性も大きく, 汚染の都度の再消毒は, 定期的な導尿を要する患者にとって, 身体的にも精神的にも大きな負担となっている. 我々は, ベッドサイドで想定される環境中の細菌によるカテーテルの汚染の程度と, その汚染への消毒薬の効果を明らかにする事を目的として, 実際の場面を想定して検討したので報告する. 入院中の患者を想定し, 予め1cmに...

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Published in兵庫県立大学看護学部・地域ケア開発研究所紀要 Vol. 17; pp. 15 - 23
Main Authors 荒川満枝, 茅野友宣, 池原弘展, 鵜飼和浩
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 兵庫県立大学看護学部・地域ケア開発研究所 01.03.2010
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ISSN1881-6592

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Summary:「要旨」脊髄損傷患者は神経因性膀胱を随伴し, ケース付きカテーテルを使用した清潔間欠導尿が選択される場合が多く, 尿路感染の合併予防にはカテーテルの消毒・保管方法が重要である. 上肢や手指の機能不全がある場合, ベッド上のリネン等を介したカテーテルの細菌汚染の危険性も大きく, 汚染の都度の再消毒は, 定期的な導尿を要する患者にとって, 身体的にも精神的にも大きな負担となっている. 我々は, ベッドサイドで想定される環境中の細菌によるカテーテルの汚染の程度と, その汚染への消毒薬の効果を明らかにする事を目的として, 実際の場面を想定して検討したので報告する. 入院中の患者を想定し, 予め1cmにカットした滅菌済みシリコンチューブを, 自宅で1週間使用したタオルケットに包み, 十分に接触後, 推奨の消毒薬に浸漬し, その消毒効果を測定した. 消毒薬浸漬前および消毒液浸漬5分後, 10分後, 30分後, 60分後に残存した細菌を測定するため, それぞれの時間にシリコンチューブを浸漬液より取り出しSCDLPブイヨン中で激しく攪拌し, SCD寒天培地にプレーティングした. 好気培養後, コロニー計数とともにその形状でグループ分けし, グラム染色を行い詳細に観察し分類した. カテーテルに付着した細菌は, 汚染直後では2×104CFU/本程度の細菌汚染が確認できた. この汚染細菌はグリセリンと混合された0.025%塩化ベンザルコニウム製剤によって, 30分間でLRV1程度の殺菌が可能で, ある程度効果が見られた. 汚染直後に採取された細菌のほとんどはグラム陽性球菌であったが, 消毒液浸漬60分後ではグラム陽性桿菌, グラム陰性球菌がみられ, グラム陽性球菌の割合は減少していた. 環境中の細菌の中に存在した本消毒薬に対し非感受性の細菌が, 60分後にはグリセリンを含む消毒薬の中で増殖していることが示唆された. 今後, 消毒薬に非感受性の細菌への対策が重要であると考えられた.
ISSN:1881-6592