看護部長の災害時におけるマネジメント能力の検討

「要旨」 世界で災害が多発する状況において, 看護組織を統括している看護部長が, 災害に見舞われた時に効果的な行動をとることは, 災害後の人々の健康や生活など多くの影響をもたらす. 本研究では看護部長の能力に着目し, 自らが災害時の困難な非常事態下で状況を判断し対応した経験を調査することにより, 災害時における看護部長の効果的な管理を展開する能力を検討し, その能力を明らかにすることを目的とする. はじめに文献検討で, 災害時における看護職や看護部長の経験や看護活動について, また看護部長が災害時に必要とされる能力はなにかを検討した. データ収集は, 災害を経験した研究に同意した看護部長あるい...

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Published in兵庫県立大学看護学部・地域ケア開発研究所紀要 Vol. 18; pp. 81 - 90
Main Author 高谷嘉枝
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 兵庫県立大学看護学部・地域ケア開発研究所 01.03.2011
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Summary:「要旨」 世界で災害が多発する状況において, 看護組織を統括している看護部長が, 災害に見舞われた時に効果的な行動をとることは, 災害後の人々の健康や生活など多くの影響をもたらす. 本研究では看護部長の能力に着目し, 自らが災害時の困難な非常事態下で状況を判断し対応した経験を調査することにより, 災害時における看護部長の効果的な管理を展開する能力を検討し, その能力を明らかにすることを目的とする. はじめに文献検討で, 災害時における看護職や看護部長の経験や看護活動について, また看護部長が災害時に必要とされる能力はなにかを検討した. データ収集は, 災害を経験した研究に同意した看護部長あるいは責任者10名を対象とした. 得られたデータは, 面接調査を基に質的な分析を行った. 倫理的配慮として研究者の所属する研究倫理委員会の承認を得たうえで, 調査を行った. 結果として看護部長は, 災害の体験や災害の知識から〈災害時の状況を想起し今後を予想する〉ことを発災直後に行っていた. 発災当初は, 情報を得る方法はなく〈情報を収集, 分析, 理解し看護職や他職種に伝える〉ことを行っていた. 〈迅速に判断・行動する〉は, 非常時下で全体をみて何が問題の核心かを把握, 判断し, 行動するのかはトップマネージャーにとって災害看護活動を導く上で重要であった. さらにいかなる状況でも患者を優先した判断は, 看護部長の災害看護活動の基礎をなすものであった. 〈看護体制の再構築〉〈看護職員に配慮する〉は, 看護組織や看護師個々にとって災害看護活動を展開するためにも効果的であった. また平素より, 非常時を想定した患者ケアの提供や施設運営を考慮した物資面での準備など〈災害に備える〉ことや〈災害看護の教育をする〉ことが災害看護の基盤として抽出された. 結論として災害時に効果的な管理を展開する能力に関する示唆が得られた. 今後は, 平常時の能力との比較分析をとおして, 看護部長の災害時の能力を明確にする必要がある.
ISSN:1881-6592