遺残虫垂が原因となった腸腰筋膿瘍の1例

症例は69歳, 男性. 既往に62年前に腹膜炎を併発した虫垂炎の手術歴がある. 1週間ほど前からの右下腹部痛, 臀部痛を主訴に当院を受診した. 腹部CT検査で回盲部から右腸腰筋内までcystic lesionが広がっており, 一部に造影効果を認めた. 回盲部の炎症から波及した腸腰筋膿瘍を疑い, 抗生剤による保存的治療を開始した. 注腸造影検査, 大腸内視鏡検査で回盲部に異常は認められず開腹手術を行った. 虫垂は完全に遺残し後腹膜に癒着して腸腰筋との問に膿瘍を形成しており, 虫垂切除術およびドレナージを施行した. 腸腰筋膿瘍はまれな疾患ではあるが腹痛とともに歩行障害がみられる場合はこれを疑いエコ...

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Published in日本腹部救急医学会雑誌 Vol. 24; no. 4; pp. 829 - 832
Main Authors 桑野, 博行, 加藤, 広行, 塚田, 勝彦, 宗田, 真, 宮崎, 達也, 中島, 政信, 深井, 康幸, 福島, 晴夫, 福地, 稔, 増田, 典弘
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本腹部救急医学会 31.05.2004
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ISSN1340-2242
1882-4781
DOI10.11231/jaem1993.24.829

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Summary:症例は69歳, 男性. 既往に62年前に腹膜炎を併発した虫垂炎の手術歴がある. 1週間ほど前からの右下腹部痛, 臀部痛を主訴に当院を受診した. 腹部CT検査で回盲部から右腸腰筋内までcystic lesionが広がっており, 一部に造影効果を認めた. 回盲部の炎症から波及した腸腰筋膿瘍を疑い, 抗生剤による保存的治療を開始した. 注腸造影検査, 大腸内視鏡検査で回盲部に異常は認められず開腹手術を行った. 虫垂は完全に遺残し後腹膜に癒着して腸腰筋との問に膿瘍を形成しており, 虫垂切除術およびドレナージを施行した. 腸腰筋膿瘍はまれな疾患ではあるが腹痛とともに歩行障害がみられる場合はこれを疑いエコー, CT, MRIを積極的に施行すべきである. 更に腸管との交通の疑われる腸腰筋膿瘍においては虫垂炎手術の既往があっても, 遺残虫垂が原因となっている可能性を念頭におくべきであり, 若干の文献的考察を加えて報告する.
ISSN:1340-2242
1882-4781
DOI:10.11231/jaem1993.24.829