左腋窩動脈-左前下行枝バイパス術の臨床成績とグラフト血流評価の検討
静脈グラフトを用いた低侵襲冠動脈バイパス術は内胸動脈がグラフトとして不当である場合に有効とされるが,現在のところ静脈グラフトの開存率を含めた臨床成績は明らかにされていない.当施設で経験した大伏左静脈(SVG)を用いた左腋窩動脈-左前下行枝(LAD)バイパス術5例の臨床成績について検討した.年齢は平均72.6歳,患者背景は,心臓手術既往2例,脳血管障害1例,食道癌術後(胸骨後再建)1例,腎不全1例であった.術式は,SVGを腋窩動脈から胸腔を通しLADに吻合した.手術時間は平均186分であった.腎不全症例を除いた4例で術後冠動脈造影を施行しグラフト開存を確認,腎不全症例は経胸壁心臓超音波検査でグラ...
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Published in | 日本心臓血管外科学会雑誌 Vol. 35; no. 2; pp. 76 - 80 |
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Main Authors | , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
15.03.2006
特定非営利活動法人日本心臓血管外科学会 The Japanese Society for Cardiouascular Surgery |
Subjects | |
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ISSN | 0285-1474 1883-4108 |
DOI | 10.4326/jjcvs.35.76 |
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Summary: | 静脈グラフトを用いた低侵襲冠動脈バイパス術は内胸動脈がグラフトとして不当である場合に有効とされるが,現在のところ静脈グラフトの開存率を含めた臨床成績は明らかにされていない.当施設で経験した大伏左静脈(SVG)を用いた左腋窩動脈-左前下行枝(LAD)バイパス術5例の臨床成績について検討した.年齢は平均72.6歳,患者背景は,心臓手術既往2例,脳血管障害1例,食道癌術後(胸骨後再建)1例,腎不全1例であった.術式は,SVGを腋窩動脈から胸腔を通しLADに吻合した.手術時間は平均186分であった.腎不全症例を除いた4例で術後冠動脈造影を施行しグラフト開存を確認,腎不全症例は経胸壁心臓超音波検査でグラフトとLADの血流を認め,5例とも退院した.術後平均10.4ヵ月の観察期間中,手術6ヵ月後にグラフト不全による死亡を1例認めた以外は冠動脈合併症なく経過した.グラフト経路が長いため圧迫などによる血栓形成の予防が重要と考えられた.鎖骨下パルスドプラ法によるグラフト血流評価を行ったところ,グラフト径(平均)4.73mm,収縮期最高血流速(平均)22.4cm/s,拡張期最高血流速(平均)22.1cm/sの結果であった.本法は経胸壁超音波検査によるグラフトの最高血流速を経時的に測定することでグラフト血流を評価することが可能であると考えた.ハイリスク症例に対する静脈グラフトを用いた低侵襲冠動脈バイパス術は有効であり,グラフト血流の評価に経胸壁超音波検査は有用であると考えられた. |
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ISSN: | 0285-1474 1883-4108 |
DOI: | 10.4326/jjcvs.35.76 |