超音波骨削開機器支援下経鼻的弁縫合涙嚢鼻腔吻合術(eFSUS-DCR)を施行した小児後天性鼻涙管閉塞症例

小児の鼻涙管閉塞症は,ほとんどが先天性であり,後天性は稀とされている。成人の難治性鼻涙管閉塞症に対する治療として,経鼻内視鏡下涙嚢鼻腔吻合術(e-DCR)が広く行われているが,小児例に対してe-DCRを施行した報告はほとんどない。当科では,涙嚢周囲の骨削開を超音波骨削開機器(ソノペット®)を用いて行い,切開した涙嚢弁と粘膜弁を縫合して大きな吻合口を形成する超音波骨削開機器支援下経鼻的弁縫合涙嚢鼻腔吻合術(eFSUS-DCR)を開発し報告している。今回我々は,eFSUS-DCRを施行し,良好な経過が得られた,稀な小児後天性鼻涙管閉塞症例を経験したので,文献的考察を加え報告する。症例は5歳女児。約...

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Published in日本鼻科学会会誌 Vol. 64; no. 2; pp. 265 - 273
Main Authors 舘野, 宏彦, 柚木, 達也, 髙倉, 大匡, 高木, 康司, 藤坂, 実千郎, 林, 篤志, 森田, 由香
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本鼻科学会 2025
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Summary:小児の鼻涙管閉塞症は,ほとんどが先天性であり,後天性は稀とされている。成人の難治性鼻涙管閉塞症に対する治療として,経鼻内視鏡下涙嚢鼻腔吻合術(e-DCR)が広く行われているが,小児例に対してe-DCRを施行した報告はほとんどない。当科では,涙嚢周囲の骨削開を超音波骨削開機器(ソノペット®)を用いて行い,切開した涙嚢弁と粘膜弁を縫合して大きな吻合口を形成する超音波骨削開機器支援下経鼻的弁縫合涙嚢鼻腔吻合術(eFSUS-DCR)を開発し報告している。今回我々は,eFSUS-DCRを施行し,良好な経過が得られた,稀な小児後天性鼻涙管閉塞症例を経験したので,文献的考察を加え報告する。症例は5歳女児。約1年前から感冒に罹患するたびに右流涙,眼脂,眼瞼炎を反復するため当院に紹介受診となった。涙道造影CTでは右涙嚢内に占拠病変が疑われた。eFSUS-DCRを施行し,涙嚢内の隆起性病変を可及的に除去した。病理検査結果はreactive lymphoid hyperplasiaであった。術後5年経過し再発無く経過良好である。eFSUS-DCRでは,骨削開にソノペット®を用いるため,ドリルに比べて涙嚢や鼻腔粘膜の巻き込み損傷が少ない。そのため,小児の狭い鼻腔でも大きな涙嚢弁や粘膜弁を温存し,これらを縫合することで,より大きな吻合口を形成することが可能となる。小児鼻涙管閉塞症例に対して,eFSUS-DCRは有用な治療手段であると考えた。
ISSN:0910-9153
1883-7077
DOI:10.7248/jjrhi.64.265