大学生における関節弛緩性とスポーツ傷害の関係 部位および損傷組織を踏まえた検討
(緒言) 関節弛緩性(JL: Joint Laxity)はスポーツ分野におけるメディカルチェックの項目として一般的であるが,スポーツ傷害発生との関係については否定的な報告も散見される1,2).こうした見解が分かれる要因の一つに,身体の部位や損傷組織を踏まえた検討がなされていない点がある. そこで,本研究ではJLとスポーツ傷害の既往歴(PH: Past History)との関係を部位別・損傷組織別に明らかにすることを目的とした.(研究方法) 対象は一般的な大学生399名(平均年齢19.8±1.4歳:男性181名・女性218名)であった. JLは東大式関節弛緩性テスト3)で評価した.手・肘・肩・膝...
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Published in | 千葉県立保健医療大学紀要 Vol. 16; no. 1; p. 1_152 |
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Main Authors | , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
千葉県立保健医療大学
31.03.2025
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ISSN | 1884-9326 2433-5533 |
DOI | 10.24624/cpu.16.1_1_152 |
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Summary: | (緒言) 関節弛緩性(JL: Joint Laxity)はスポーツ分野におけるメディカルチェックの項目として一般的であるが,スポーツ傷害発生との関係については否定的な報告も散見される1,2).こうした見解が分かれる要因の一つに,身体の部位や損傷組織を踏まえた検討がなされていない点がある. そこで,本研究ではJLとスポーツ傷害の既往歴(PH: Past History)との関係を部位別・損傷組織別に明らかにすることを目的とした.(研究方法) 対象は一般的な大学生399名(平均年齢19.8±1.4歳:男性181名・女性218名)であった. JLは東大式関節弛緩性テスト3)で評価した.手・肘・肩・膝・足関節は左右各0.5点,脊柱・股関節は1点とし,合計点をJLスコアとした. PHは過去5年間にスポーツ中に受傷したものをアンケートで収集した.姫野らの報告4)を基に損傷組織別(骨損傷・関節損傷・筋損傷・その他)に分類し,各回数を求めた(PH回数). JLスコアとPH回数は部位別(上肢・下肢・体幹)でも集計し,相関分析と群間比較を行った(有意水準5%).(結果) JLスコアは男性より女性で高かったが(男性:1.8±1.4/女性:2.7±1.5点),部位別でみると下肢のみ有意な性差が認められなかった.PHは対象者全体で延べ799件(Median=1,IQR=0,3)あり,足関節捻挫(270件),大腿部の肉離れ(71件),突き指(66件)の順に多かった. 年齢・性別を制御したJLスコアとPH回数の偏相関分析の結果,いずれの項目にも明らかな相関を認めなかった(|r|≒0.1). JL有無・年代・性別を要因としたPH回数の3元配置分散分析の結果,骨損傷はJL無し群で多く(無し群:0.3±0.7/有り群:0.1±0.5件),体幹の骨損傷は男性で多かった(男性:0.1±0.4/女性:0.0±0.2件)(Mean±SD).(考察) JLが男性より女性で高いことは多くの先行研究5,6)を追認したが,下肢には明らかな性差がないことは新知見であった.PHの発生状況は大学スポーツ協会の報告7)と概ね一致した. JLスコアとPH回数の相関はいずれの部位・組織でも認めなかったものの,骨損傷はJL無し群で多かった.このことから,JLが低いと骨に力学的負荷が集中しやすい可能性は無視できないが,因果関係や体幹損傷の性差は受傷機転を踏まえた慎重な議論が必要である.また,JLに筋タイトネスが併存することを問題視する報告8)もあるため,今後より多角的な検討が期待される.(倫理規定) 本研究は千葉県立保健医療大学研究倫理審査委員会の承認を得て実施した(No.2022-26).対象者には研究内容の説明後,書面で同意を得た.(研究成果の公表) 本研究は第43回関東甲信越ブロック理学療法士学会・第30回千葉県理学療法学術大会(合同大会)で2024年10月5日・6日に発表予定である. |
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ISSN: | 1884-9326 2433-5533 |
DOI: | 10.24624/cpu.16.1_1_152 |