急性大動脈閉塞症を発症した腹部大動脈瘤・両側総腸骨動脈瘤に対して一期的に人工血管置換術を施行した1例

症例は63歳,男性.突然発症の両下肢痛を主訴に当院へ救急搬送された.造影CTで大動脈閉塞を伴う腹部大動脈瘤と両側総腸骨動脈瘤を認めた.両側外腸骨動脈から両側浅大腿動脈にかけての造影効果は改善していたが,右膝窩動脈で再度血流は途絶していた.急性下肢動脈閉塞症を伴う急性大動脈閉塞症に対して緊急手術を行うこととした.まず腹部正中切開を行って大動脈を露出し,腹部大動脈と両側総腸骨動脈を遮断して16×8 mmの分岐型人工血管による中枢側吻合を行った.次に右総大腿動脈に縦切開を加えて右膝窩動脈の血栓除去を行い,人工血管の右脚を後腹膜下経由で右鼠径部に誘導して端側吻合を行って右下肢の灌流を再開した.左脚も同...

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Published in日本心臓血管外科学会雑誌 Vol. 54; no. 4; pp. 174 - 177
Main Authors 鉢呂 康平, 山田 知行, 鈴木 友彰, 勝山 和彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会 15.07.2025
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ISSN0285-1474
1883-4108
DOI10.4326/jjcvs.54.174

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Summary:症例は63歳,男性.突然発症の両下肢痛を主訴に当院へ救急搬送された.造影CTで大動脈閉塞を伴う腹部大動脈瘤と両側総腸骨動脈瘤を認めた.両側外腸骨動脈から両側浅大腿動脈にかけての造影効果は改善していたが,右膝窩動脈で再度血流は途絶していた.急性下肢動脈閉塞症を伴う急性大動脈閉塞症に対して緊急手術を行うこととした.まず腹部正中切開を行って大動脈を露出し,腹部大動脈と両側総腸骨動脈を遮断して16×8 mmの分岐型人工血管による中枢側吻合を行った.次に右総大腿動脈に縦切開を加えて右膝窩動脈の血栓除去を行い,人工血管の右脚を後腹膜下経由で右鼠径部に誘導して端側吻合を行って右下肢の灌流を再開した.左脚も同様に左鼠径部に誘導して左総大腿動脈に端側吻合し,両側総腸骨動脈をそれぞれの外・内腸骨動脈分岐部直上で閉鎖して手術を終了とした.術後の造影CTでは両下肢の血流は改善していたが,右下腿の筋肉に一部壊死所見を認めていた.術直後から右下垂足の症状を認めていたが,徐々に運動機能は改善を認め術後32日目に杖歩行で自宅退院となった.
ISSN:0285-1474
1883-4108
DOI:10.4326/jjcvs.54.174