内視鏡下に切除しえた6歳の巨大な鼻腔良性血管系腫瘍例

内視鏡下の鼻腔腫瘍切除は顔面の変形も少なく低侵襲で,近年外切開と遜色ない成績の報告が増えている。しかし小児の鼻腔は狭く,さらに腫瘍が大きい場合はworking spaceの確保に難渋することがある。内視鏡手術では良好な視野とworking spaceの確保が重要で,術前の腫瘍基部の推定・アプローチ法などを術前に十分検討する必要がある。本症例では左鼻入口部から中咽頭まで達する巨大な腫瘍性病変を内視鏡単独で切除し得たので文献的考察を交えて報告する。症例は6歳男児。左鼻腔内に暗赤色の腫瘍性病変が充満し鼻内は観察困難で,右鼻腔も腫瘍の圧排による鼻中隔弯曲を認め右鼻腔内も観察困難であった。造影CT検査で...

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Published in日本鼻科学会会誌 Vol. 64; no. 2; pp. 274 - 281
Main Authors 三橋, 泰仁, 木村, 翔一, 木庭, 忠士, 坂田, 俊文
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本鼻科学会 2025
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Summary:内視鏡下の鼻腔腫瘍切除は顔面の変形も少なく低侵襲で,近年外切開と遜色ない成績の報告が増えている。しかし小児の鼻腔は狭く,さらに腫瘍が大きい場合はworking spaceの確保に難渋することがある。内視鏡手術では良好な視野とworking spaceの確保が重要で,術前の腫瘍基部の推定・アプローチ法などを術前に十分検討する必要がある。本症例では左鼻入口部から中咽頭まで達する巨大な腫瘍性病変を内視鏡単独で切除し得たので文献的考察を交えて報告する。症例は6歳男児。左鼻腔内に暗赤色の腫瘍性病変が充満し鼻内は観察困難で,右鼻腔も腫瘍の圧排による鼻中隔弯曲を認め右鼻腔内も観察困難であった。造影CT検査で腫瘍は左鼻腔後方の鼻中隔側に強い造影効果を認めるhypervascularな病変で,MRIではT2WIで不均一な高信号とflow voidを認めた。また腫瘍外側には非造影域を認めた。血管造影検査でfeederは左蝶口蓋動脈であり,栄養血管塞栓後に全身麻酔下に一塊切除を行う方針とした。腫瘍基部は鼻腔後方の鼻中隔側にあり鼻中隔矯正術+経鼻腔的アプローチで左鼻腔腫瘍を内視鏡下に一塊切除した。術中迅速検査では血管線維腫が疑われたが,最終診断は化膿性肉芽腫の診断であった。術後経過は再発なく,鼻中隔弯曲も改善し経過良好である。化膿性肉芽腫は血管系腫瘍に分類され,鼻腔後方に生じた場合は血管線維腫等との鑑別が必要である。
ISSN:0910-9153
1883-7077
DOI:10.7248/jjrhi.64.274