診療所におけるスギ花粉症疑い症例の臨床検査所見の検討
スギ花粉症は依然として増加傾向にある。診断には血液検査による血清スギ特異的IgEの測定が行われることが多いが,必ずしも全例に行われるわけではない。本研究はスギ花粉症疑い症例において血液検査を行う意義を明らかにすることを目的とする。スギ花粉症を疑い臨床検査を行った557症例につき,年齢,血清スギ特異的IgEクラス値,末梢血好酸球数,血清総IgE値,スギ以外の11種類の空中浮遊抗原の血清特異的IgEクラス値および陽性であった抗原の種類数について検討した。スギ花粉症疑い症例において血清スギ特異的IgEクラス値が2以上でスギ花粉症と診断したのは464例(83.3%)であった。末梢血好酸球数および血清総...
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Published in | 日本鼻科学会会誌 Vol. 64; no. 2; pp. 219 - 227 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本鼻科学会
2025
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Subjects | |
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Summary: | スギ花粉症は依然として増加傾向にある。診断には血液検査による血清スギ特異的IgEの測定が行われることが多いが,必ずしも全例に行われるわけではない。本研究はスギ花粉症疑い症例において血液検査を行う意義を明らかにすることを目的とする。スギ花粉症を疑い臨床検査を行った557症例につき,年齢,血清スギ特異的IgEクラス値,末梢血好酸球数,血清総IgE値,スギ以外の11種類の空中浮遊抗原の血清特異的IgEクラス値および陽性であった抗原の種類数について検討した。スギ花粉症疑い症例において血清スギ特異的IgEクラス値が2以上でスギ花粉症と診断したのは464例(83.3%)であった。末梢血好酸球数および血清総IgE値は血清スギ特異的IgEクラス高値群(クラス4–6)では低値群(クラス2,3)および非陽性群(クラス0,1)に比べて有意に高かった。スギ花粉症非陽性群例は9歳以下では25.0%を占めた。スギ花粉症例で血清スギ特異的IgEクラス高値群が占める割合は19歳以下で62.6%であった。12種類の空中浮遊抗原の陽性抗原種類数が5以上の多抗原感作を認めたのは34.7%であった。症状からスギ花粉症が疑われても実際に血清スギ特異的IgEが陽性であるのは特に9歳以下では75.0%と低いため低年齢での診断は慎重に行うべきと考えられる。スギ花粉症例では19歳以下で血清スギ特異的IgEクラスの高値例が多く,年齢を考慮した評価が必要と考えられる。また,スギ花粉症においても多抗原感作を念頭に置いた治療が必要と考えられる。 |
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ISSN: | 0910-9153 1883-7077 |
DOI: | 10.7248/jjrhi.64.219 |