NDBオープンデータから見たわが国における嗅覚診療の現況

COVID-19のパンデミックがきっかけで,嗅覚障害に広く関心が持たれるようになったが,その診療には地域差があることが推測される。この点に注目した報告はあまりないため,厚生労働省から公表されているNDBオープンデータ(レセプトデータ)や国勢調査などを元に検討を行った。基準嗅覚検査の実施数では,東京都が最も多いが,人口が多いためで,人口比で見ると,石川県が最多であった。また,基準嗅覚検査の実施件数と人口当たりの耳鼻咽喉科医数とは有意な関係があった。静脈性嗅覚検査は総数では東京都が最も多いが,人口比では広島県が最多であった。静脈性嗅覚検査は全国で広く行われているが,基準嗅覚検査は都道府県格差がある...

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Published in日本鼻科学会会誌 Vol. 64; no. 2; pp. 228 - 235
Main Author 石丸 正
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本鼻科学会 2025
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Summary:COVID-19のパンデミックがきっかけで,嗅覚障害に広く関心が持たれるようになったが,その診療には地域差があることが推測される。この点に注目した報告はあまりないため,厚生労働省から公表されているNDBオープンデータ(レセプトデータ)や国勢調査などを元に検討を行った。基準嗅覚検査の実施数では,東京都が最も多いが,人口が多いためで,人口比で見ると,石川県が最多であった。また,基準嗅覚検査の実施件数と人口当たりの耳鼻咽喉科医数とは有意な関係があった。静脈性嗅覚検査は総数では東京都が最も多いが,人口比では広島県が最多であった。静脈性嗅覚検査は全国で広く行われているが,基準嗅覚検査は都道府県格差があることが疑われた。COVID-19パンデミック時,嗅覚検査が減少している都道府県が多いが,京都府,千葉県,山形県では増加傾向を示していた。COVID-19で嗅覚障害が発症するにも関わらず検査数が減少したのは,検査時の感染防御が難しかったためでないかと推測された。
ISSN:0910-9153
1883-7077
DOI:10.7248/jjrhi.64.228