蝶形骨洞浸潤性真菌症を疑った下垂体膿瘍による外転神経麻痺の一例
はじめに:蝶形骨洞浸潤性真菌症は脳神経麻痺等の重篤な合併症を来すことがあるが,下垂体膿瘍も同様の症状を引き起こす。今回我々は蝶形骨洞浸潤性真菌症を疑った下垂体膿瘍による外転神経麻痺の一例を経験したので報告する。症例:症例は68歳女性。当科初診1ヶ月前より頭痛,4日前より複視が出現したため当科紹介となった。鼻副鼻腔CTにて石灰化を伴う左蝶形骨洞陰影とトルコ鞍底右側の骨破壊を認めた。蝶形骨洞浸潤性真菌症疑いで同日両側内視鏡下鼻内副鼻腔手術(Endoscopic Endonasal Sinus Surgery: ESS)を施行した。左蝶形骨洞内に真菌塊を認め,経鼻中隔アプローチで粘膜を含めて除去を行...
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Published in | 日本鼻科学会会誌 Vol. 64; no. 2; pp. 251 - 257 |
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Main Authors | , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本鼻科学会
2025
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Subjects | |
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Summary: | はじめに:蝶形骨洞浸潤性真菌症は脳神経麻痺等の重篤な合併症を来すことがあるが,下垂体膿瘍も同様の症状を引き起こす。今回我々は蝶形骨洞浸潤性真菌症を疑った下垂体膿瘍による外転神経麻痺の一例を経験したので報告する。症例:症例は68歳女性。当科初診1ヶ月前より頭痛,4日前より複視が出現したため当科紹介となった。鼻副鼻腔CTにて石灰化を伴う左蝶形骨洞陰影とトルコ鞍底右側の骨破壊を認めた。蝶形骨洞浸潤性真菌症疑いで同日両側内視鏡下鼻内副鼻腔手術(Endoscopic Endonasal Sinus Surgery: ESS)を施行した。左蝶形骨洞内に真菌塊を認め,経鼻中隔アプローチで粘膜を含めて除去を行った。右蝶形骨洞粘膜を剥離するとトルコ鞍内から排膿を認めたため,洗浄を行い終刀とした。蝶形骨洞粘膜に真菌の粘膜浸潤は認めず,β-Dグルカンやアスペルギルス抗原は陰性,下垂体膿瘍の培養でも真菌は検出されなかった。以上より真菌症は非浸潤性であり,下垂体膿瘍による左外転神経麻痺と診断した。術後4週間程度の抗菌薬加療を行い,外転神経麻痺は治癒し,良好な経過をたどっている。考察:蝶形骨洞浸潤性真菌症と下垂体膿瘍は症状が類似しており,術前診断が難しいことから鑑別に苦慮する場合がある。双方の可能性を考慮し,耳鼻咽喉科と脳神経外科が適切なコミュニケーションを取りつつ診療に当たるべきである。 |
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ISSN: | 0910-9153 1883-7077 |
DOI: | 10.7248/jjrhi.64.251 |