疾病および関連保健問題の国際統計分類第11回改訂版(ICD-11)フィールドトライアルにおけるコーディング結果の一致性の評価
目的:ICD-10からICD-11への改訂において分類の構成が大きく変化し,エクステンションコード(重症度や解剖学的部位などの補助情報)が新設されるなど,コーディング内容に変化が生じており,コーディングの質に影響を与える可能性がある.本研究では,我が国で2017年に実施されたICD-11フィールドトライアルのコーディングのデータを用いて,WHOからゴールドスタンダード(GS)コードが提供された診断用語のコーディング結果の一致性について分析することを目的とした.具体的には,評価者のICD-10のコーディング結果をWHOのICD-10のGSと比較して正解率を算出し,同様に評価者のICD-11のコー...
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Published in | 保健医療科学 Vol. 70; no. 3; pp. 306 - 314 |
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Main Authors | , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
国立保健医療科学院
31.08.2021
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Subjects | |
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Summary: | 目的:ICD-10からICD-11への改訂において分類の構成が大きく変化し,エクステンションコード(重症度や解剖学的部位などの補助情報)が新設されるなど,コーディング内容に変化が生じており,コーディングの質に影響を与える可能性がある.本研究では,我が国で2017年に実施されたICD-11フィールドトライアルのコーディングのデータを用いて,WHOからゴールドスタンダード(GS)コードが提供された診断用語のコーディング結果の一致性について分析することを目的とした.具体的には,評価者のICD-10のコーディング結果をWHOのICD-10のGSと比較して正解率を算出し,同様に評価者のICD-11のコーディング結果をWHOのICD-11のGSと比較して正解率を算出した.その後に,「ICD-10の正解/不正解」と「ICD-11の正解/不正解」の一致性を分析するために今回の研究を行った.方法:我が国のICD-11フィールドトライアルは,2017年 8 月 1 日から 9 月10日を評価期間として,診療情報管理士298名が参加して実施された.その結果を基に診断用語コーディングのICD-10とICD-11のそれぞれの正解率およびICD-11の主病名の正解率を算出した.それらの結果と,コードの特徴との関連を検討した.コードの特徴としてGSコード数,主病名のコードの桁数,その他のコード(Yコード)や詳細不明コード(Zコード)の有無,エクステンションコードの有無をあげた.更に有効回答評価者の評価結果のICD-10/ICD-11のコーディングの一致性の評価としてGwet’s AC1 を用いて検討した.結果:ICD-11において正解率が高い診断用語は,GSコード数が少なく,その他のコード(Yコード)や詳細不明コード(Zコード),エクステンションコードを必要としないものが多かった.ICD-11において正解率が5%未満と低い診断用語は,GSコード数が複数であり,主病名のコードの桁数が4~6桁と多く,その他のコード(Yコード)や 詳細不明コード(Zコード),エクステンションコードを必要とするものが多かった.サイトメガロウイルス性大腸炎の正解率はICD-10における36.55%からICD-11における89.85%と,19の診断用語の中で最も向上していた.これはICD-11 においては,疾病ごとにコードが割り当てられたため,詳細な分類が可能となったことが影響している.Gwet’s AC1値が,0未満と低かった診断用語も,エクステンションコードを必要とするものが多かった.結論:詳細な分類が可能となった診断用語は,正解率が高く,ICD-11への改訂が,コーディング結果への向上に繋がっていた.一方で,GSコード数が複数であり,エクステンションコードを必要とする診断用語は,正解率が低かった.今後,複数のコードやエクステンションコードの使い方について,十分な教育コンテンツを準備することが必要である.今回のフィールドトライアルは一部の資料を除き英語環境下での実施であったため,国内適用の前には,十分な研修と完全な日本語環境によるフィールドトライアルの実施が求められる. |
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ISSN: | 1347-6459 2432-0722 |
DOI: | 10.20683/jniph.70.3_306 |