義歯と咬合のエビデンス基盤

義歯に関する咬合については種々の咬合理論が提示されており, 同一の欠損状態に対しても画一的な咬合を附与するための基盤は完成しているとは言い難い. また顎関節症との関連で, 咬合の改変によって良好な経過を示す症例が報告される一方で, 咬合調整を何度行っても不調を訴え続ける症例, あるいは歯冠補綴を行った後に咬合の不安定感が消失せず何度歯冠補綴を再製しても治癒に至らない症例も報告される. これらについての論理的な結論を得るためにエビデンスは非常に重要である. しかし, これまでに行われてきたEBMについてのreviewを見ても, 多くは, 咬合に関する臨床術式ならびに症状の多様性等によって評価の統...

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Published in九州歯科学会雑誌 Vol. 60; no. 4/5; pp. 103 - 111
Main Author 皆木省吾
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 九州歯科学会 01.12.2006
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ISSN0368-6833

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Summary:義歯に関する咬合については種々の咬合理論が提示されており, 同一の欠損状態に対しても画一的な咬合を附与するための基盤は完成しているとは言い難い. また顎関節症との関連で, 咬合の改変によって良好な経過を示す症例が報告される一方で, 咬合調整を何度行っても不調を訴え続ける症例, あるいは歯冠補綴を行った後に咬合の不安定感が消失せず何度歯冠補綴を再製しても治癒に至らない症例も報告される. これらについての論理的な結論を得るためにエビデンスは非常に重要である. しかし, これまでに行われてきたEBMについてのreviewを見ても, 多くは, 咬合に関する臨床術式ならびに症状の多様性等によって評価の統一が困難であるという結論に帰着しているのみであり, 解決的, 結論的な論を得るに至ってはおらず, 咬合と顎関節症についての議論も結論をみるに至っているとは考えがたい. また, このことの原因の一つとしては, 咬合に関する治療の技術依存性の高さが影響を及ぼしている可能性もあると考えられる. 例えば, 臼歯部の偏心運動時の咬合接触, 咬頭嵌合位における咬合接触の厳密な再現, アンテリアガイダンスの厳密な再現など, 顎関節症患者あるいは一般患者においても, 歯冠修復に求められる高度な要求を満たすためにはそれに適したロジックを持つ修復法を実施する事が必要である. このような要求に適応する歯冠修復方法として2回鋳造法がある. 2回鋳造法は, 従来の鋳造歯冠修復法(クラウン, ブリッジ)の精度的な欠点を補う有効な方法であり, この方法についても紹介する.
ISSN:0368-6833