絞扼性イレウスの早期診断法

目的: 多変量解析を用いた判別式が, 絞扼性イレウスの早期診断に有用かを検討する. 対象・方法: 1994年から1999年までの6年間に, 教室で経験したイレウス手術症例39例を対象とした. これらを絞扼群11例, 単純群28例に分け比較検討し, 絞扼性イレウスの診断に特徴的な因子を明らかにして, 多変量解析による判別式を算出した. また, この式を用いてprospectiveに検討し, 早期診断法としての有用性について検討した. 結果: 理学的所見では, 腹膜刺激症状があった症例は絞扼群の6例 (54.5%) のみで, 単純群では認めなかった (p≦0.001) 術前検査所見では, Pco2...

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Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 36; no. 1; pp. 11 - 17
Main Authors 山岸, 茂, 山口, 茂樹, 望月, 弘彦, 森脇, 義弘, 木村, 英明, 藤井, 正一, 市川, 靖史, 池, 秀之, 嶋田, 鉱, 大木, 繁男
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 2003
一般社団法人日本消化器外科学会
The Japanese Society of Gastroenterological Surgery
Subjects
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ISSN0386-9768
1348-9372
DOI10.5833/jjgs.36.11

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Summary:目的: 多変量解析を用いた判別式が, 絞扼性イレウスの早期診断に有用かを検討する. 対象・方法: 1994年から1999年までの6年間に, 教室で経験したイレウス手術症例39例を対象とした. これらを絞扼群11例, 単純群28例に分け比較検討し, 絞扼性イレウスの診断に特徴的な因子を明らかにして, 多変量解析による判別式を算出した. また, この式を用いてprospectiveに検討し, 早期診断法としての有用性について検討した. 結果: 理学的所見では, 腹膜刺激症状があった症例は絞扼群の6例 (54.5%) のみで, 単純群では認めなかった (p≦0.001) 術前検査所見では, Pco2の平均が絞扼群34.6mmHgで, 単純群41.2mmHgより有意に低値であった (p≦0.001). 腹部超音波検査では, 絞扼群で腹水と拡張腸管におけるto and fro movementの消失が高頻度であった (p≦0.001, p≦0.05). 腹部CT検査では, 腹水, 腸管壁の肥厚, 造影効果の減弱を絞扼群全例に認め, 単純群ではおのおの20.0, 30.0, 0%であった. 腹水の有無は両群間に有意差を認めた (p≦0.001). 多変量解析では, 独立した因子として腹膜刺激症状, 腹水の存在, Pco2が残り, これらから判別式を以下のごとく算出した. Y=0.48×Peritoneal irritation sign (1/0) +0.31×Collection of ascites (1/0)-0.052×Pco2 (mmHg) +2.12 (1: positive, 0: negative). Cut off値0.6でaccuracy 100%であった. Prospective studyでは, 絞扼性イレウスの偽陰性1例を除いて全例正しく群別され, sensitivity 85.7%, specificity 100%, accuracy91.7%と良好な成績を示した. 結論: 絞扼性イレウスで特徴的なのは, 腹膜刺激症状, 腹水の存在, Pco2の低下であった. 今回, 算出した判別式は絞扼性イレウスの早期診断法として有用と思われた.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.36.11