テストステロンにて重症急性膵炎を発症した性同一性障害の1例

急性膵炎の原因はさまざまなものがあげられるが, 今回われわれはテストステロンが誘因と考えられた薬剤性重症急性膵炎の1例を経験したので報告する. 症例は32歳, 女性. 性同一性障害にて他院で両側乳房切除後, 週1回, テストステロン投与をされていた. 2004年5月上旬に腹部膨満感が出現し, その後急激に腹痛, 腰背部痛, 嘔吐出現したため当院に救急搬送された. 腹部所見およびCT所見より急性膵炎と診断, 緊急入院となった. 絶食としNafamostat mesilate 200mg/dayとMeropenem trihydrate 1g/dayの持続動注療法を開始した. その後, 腹腔内膿瘍...

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Published in日本腹部救急医学会雑誌 Vol. 26; no. 1; pp. 53 - 57
Main Authors 山本, 紀彦, 本多, 正彦, 西原, 政好, 岡田, 善裕, 辻, 慶久, 島田, 守, 李, 喬遠, 岡, 博史
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本腹部救急医学会 31.01.2006
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Summary:急性膵炎の原因はさまざまなものがあげられるが, 今回われわれはテストステロンが誘因と考えられた薬剤性重症急性膵炎の1例を経験したので報告する. 症例は32歳, 女性. 性同一性障害にて他院で両側乳房切除後, 週1回, テストステロン投与をされていた. 2004年5月上旬に腹部膨満感が出現し, その後急激に腹痛, 腰背部痛, 嘔吐出現したため当院に救急搬送された. 腹部所見およびCT所見より急性膵炎と診断, 緊急入院となった. 絶食としNafamostat mesilate 200mg/dayとMeropenem trihydrate 1g/dayの持続動注療法を開始した. その後, 腹腔内膿瘍を合併したため経皮的膿瘍ドレナージを行ったが症状は改善せず、開腹して壊死切除と膿瘍ドレナージ術を行った. 術後は持続的に腹腔内洗浄を行い, 症状が改善し退院した. 退院して約6ヵ月後にテストステロン再投与により急性膵炎を再発して再入院となった. テストステロン再投与によって再発したため, 薬剤性膵炎の成因としてテストステロンは確実なものと考えられた.
ISSN:1340-2242
1882-4781
DOI:10.11231/jaem1993.26.53