青年期以降の発達研究の動向と展望 発達研究の多様性と可能性

本稿の目的は,2019年7月―2020年6月までの1年間に国内で刊行された国内学会誌5誌と2020年9月にオンラインで開催された日本教育心理学会第62回総会で発表された青年期から成人期,老年期までの発表を概観し,その現状と課題を明らかにすることである。中学生,高校生,大学生他,青年期の複数時期,成人期以降,多世代の発達時期について,自己,対人関係,学習,キャリア発達,生活という5つの研究領域に関する観点から分類し,研究内容の概要と動向をまとめた。分析の結果,青年期以降の発達研究は,高校生の研究は少ないが,研究対象の発達時期,領域,方法は多様であり,生涯発達に関する知見が着実に蓄積されていると考...

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Published in教育心理学年報 Vol. 60; pp. 11 - 31
Main Author 池田, 幸恭
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本教育心理学会 30.03.2021
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ISSN0452-9650
2186-3091
DOI10.5926/arepj.60.11

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Summary:本稿の目的は,2019年7月―2020年6月までの1年間に国内で刊行された国内学会誌5誌と2020年9月にオンラインで開催された日本教育心理学会第62回総会で発表された青年期から成人期,老年期までの発表を概観し,その現状と課題を明らかにすることである。中学生,高校生,大学生他,青年期の複数時期,成人期以降,多世代の発達時期について,自己,対人関係,学習,キャリア発達,生活という5つの研究領域に関する観点から分類し,研究内容の概要と動向をまとめた。分析の結果,青年期以降の発達研究は,高校生の研究は少ないが,研究対象の発達時期,領域,方法は多様であり,生涯発達に関する知見が着実に蓄積されていると考えられた。研究対象の偏り,研究方法の発展,研究成果の理解という問題について,オープンサイエンスに基づくデータの共有,マクロレベルとミクロレベルの多水準の時間単位の接続,発達観の明示に伴う科学コミュニケーションの必要性と可能性を論じた。これらの展開をとおして,発達研究が一人ひとりの多様な発達の理解に貢献することが期待できる。
ISSN:0452-9650
2186-3091
DOI:10.5926/arepj.60.11