下唇に発生したAntoni AB混在型神経鞘腫の1例

神経鞘腫はSchwann細胞に由来し全身に発生しうる良性腫瘍であるが,口唇に発生するのは比較的稀である.今回われわれは,下唇に発生した神経鞘腫の1例を経験したので報告する.患者は28歳女性で,10年以上前より右側下唇の腫脹を自覚していた.最近になって腫瘤の増大を自覚し,近在歯科を受診したところ,精査加療を勧められ,紹介により当科を202X年10月に受診した.初診時,右側下唇の粘膜面に20×10mm大,弾性硬,無痛性で健常粘膜に被覆された粘膜下腫瘤を認めた.MRI所見では,T1強調像で低信号,T2強調像で高信号の境界明瞭,内部不均一の類円形病変を認めた.右側下唇良性腫瘍の臨床診断のもと,2023...

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Published in昭和医科大学雑誌 Vol. 85; no. 4; pp. 308 - 314
Main Authors 佐藤 仁, 堅田 凌悟, 朝倉 眞莉子, 池端 陽介, 代田 達夫, 田口 直渡
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 昭和医科大学学士会 2025
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ISSN2759-8144
2759-8152
DOI10.14930/jsmu.85.4_308

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Summary:神経鞘腫はSchwann細胞に由来し全身に発生しうる良性腫瘍であるが,口唇に発生するのは比較的稀である.今回われわれは,下唇に発生した神経鞘腫の1例を経験したので報告する.患者は28歳女性で,10年以上前より右側下唇の腫脹を自覚していた.最近になって腫瘤の増大を自覚し,近在歯科を受診したところ,精査加療を勧められ,紹介により当科を202X年10月に受診した.初診時,右側下唇の粘膜面に20×10mm大,弾性硬,無痛性で健常粘膜に被覆された粘膜下腫瘤を認めた.MRI所見では,T1強調像で低信号,T2強調像で高信号の境界明瞭,内部不均一の類円形病変を認めた.右側下唇良性腫瘍の臨床診断のもと,2023年1月に全身麻酔下にて右側下唇腫瘍摘出術を施行した.病理組織学的に,線維性被膜に覆われた腫瘤内に,紡錘形の核を持つ腫瘍細胞が柵状,観兵式状に配列し,球状の類臓器構造を呈するVerocay小体を認める領域と,細胞密度が疎に網目状配列し,間質組織に空胞変性を認める領域とが混在し,免疫組織学的にS100蛋白陽性を示したことから,Antoni AB混在型神経鞘腫と診断した.現在,術後9か月が経過したが,再発もなく経過良好である.
ISSN:2759-8144
2759-8152
DOI:10.14930/jsmu.85.4_308