《論文》狂言の笑いの美 「雁礫」の笑いにみる神事性
狂言は日本の古典喜劇である。狂言の笑いについて和泉元秀は「笑いの美の表現」と述べた。狂言の笑いについてはこれまで様々な研究がなされてきたが、実際の舞台の笑いの現象から着想された論考は少ない。本稿は筆者の狂言の舞台経験から、役者の笑いと観客の笑いが重ならないことに着目し、その原因を役者と観客が同じ笑いを笑っていないことに因るという仮説の下、「かさね」「二の舞」「もどき」の観点から狂言の笑いの性格と目的について検討したものである。狂言「雁礫」の詞章の構成と登場人物の役割を検証した結果、狂言に日本の原始信仰の要素を見出すことができた。そして狂言の笑いを信仰的に解釈した結果、「笑いの美」の意味と、それ...
Saved in:
Published in | 笑い学研究 Vol. 31; pp. 29 - 38 |
---|---|
Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本笑い学会
2024
|
Online Access | Get full text |
ISSN | 2189-4132 2423-9054 |
DOI | 10.18991/warai.31.0_29 |
Cover
Summary: | 狂言は日本の古典喜劇である。狂言の笑いについて和泉元秀は「笑いの美の表現」と述べた。狂言の笑いについてはこれまで様々な研究がなされてきたが、実際の舞台の笑いの現象から着想された論考は少ない。本稿は筆者の狂言の舞台経験から、役者の笑いと観客の笑いが重ならないことに着目し、その原因を役者と観客が同じ笑いを笑っていないことに因るという仮説の下、「かさね」「二の舞」「もどき」の観点から狂言の笑いの性格と目的について検討したものである。狂言「雁礫」の詞章の構成と登場人物の役割を検証した結果、狂言に日本の原始信仰の要素を見出すことができた。そして狂言の笑いを信仰的に解釈した結果、「笑いの美」の意味と、それが役者によってどのように「表現」されているかが明らかになった。舞台で演じられる狂言の笑いの本源的目的と観客が愉しむ私的な笑いの目的性の違いから、両者の笑い合うタイミングの不一致が推察された。 |
---|---|
ISSN: | 2189-4132 2423-9054 |
DOI: | 10.18991/warai.31.0_29 |