成人脳損傷者の談話・会話データの分析

本稿では, 成人の脳損傷者の談話, 会話データの発話分析について考察した. 分析対象, データの量, データの種類, 分析方法といった発話分析に際して考慮すべき観点を述べた後, 先行研究を概観した. さらに, 形態統語論的な観点と談話分析的な観点から, 流暢性失語症者と認知症者の発話の分析を試みた. 流暢性失語症者の発話では助詞の誤用のような形態統語論的な誤りが目立った. 認知症者の発話では形態統語論的な誤りはみられず, 脱文脈の命題が用いられるなど談話レベルでの不適切さがみられた. 最後に, 対象者, 分析目的, データ収集, 分析に要する時間などを考慮し, 適切な分析方法を採ることの重要性...

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Published inコミュニケーション障害学 Vol. 22; no. 2; pp. 100 - 108
Main Authors 吉田 敬, 長塚紀子, 荻野 恵
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本コミュニケーション障害学会 31.08.2005
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ISSN1347-8451

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Summary:本稿では, 成人の脳損傷者の談話, 会話データの発話分析について考察した. 分析対象, データの量, データの種類, 分析方法といった発話分析に際して考慮すべき観点を述べた後, 先行研究を概観した. さらに, 形態統語論的な観点と談話分析的な観点から, 流暢性失語症者と認知症者の発話の分析を試みた. 流暢性失語症者の発話では助詞の誤用のような形態統語論的な誤りが目立った. 認知症者の発話では形態統語論的な誤りはみられず, 脱文脈の命題が用いられるなど談話レベルでの不適切さがみられた. 最後に, 対象者, 分析目的, データ収集, 分析に要する時間などを考慮し, 適切な分析方法を採ることの重要性について強調した.
ISSN:1347-8451