ウシ主要組織適合遺伝子複合体(BoLA)領域の多様性と抗病性

「はじめに」 牛サルモネラ症, 大腸菌0157, 口蹄疫, 牛伝染性鼻気管炎, コクシジウム症, ヨーネ病, 乳房炎, 牛白血病, 牛ウイルス性下痢症などのウシの感染症は世界規模で畜産界に多大な経済損失を与え続けている. 中でも, 乳房炎を初めとする慢性感染症の主要な治療方法である抗生物質の投与は, 抗生物質耐性の病原体の出現や, 畜産物中への抗生物質の残留といった問題を抱えている. また, 多くの感染症は病原体に対するワクチン療法により大きな効果を上げてきたが, 乳房炎や牛白血病といった慢性感染症においては有効なワクチンは存在しない. 従って, ウシの感染症は肉牛や乳牛などの食料の安定供給お...

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Published in動物遺伝育種研究 Vol. 35; no. 1; pp. 51 - 64
Main Authors 竹嶋伸之輔, 間陽子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本動物遺伝育種学会 2007
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ISSN1345-9961

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Summary:「はじめに」 牛サルモネラ症, 大腸菌0157, 口蹄疫, 牛伝染性鼻気管炎, コクシジウム症, ヨーネ病, 乳房炎, 牛白血病, 牛ウイルス性下痢症などのウシの感染症は世界規模で畜産界に多大な経済損失を与え続けている. 中でも, 乳房炎を初めとする慢性感染症の主要な治療方法である抗生物質の投与は, 抗生物質耐性の病原体の出現や, 畜産物中への抗生物質の残留といった問題を抱えている. また, 多くの感染症は病原体に対するワクチン療法により大きな効果を上げてきたが, 乳房炎や牛白血病といった慢性感染症においては有効なワクチンは存在しない. 従って, ウシの感染症は肉牛や乳牛などの食料の安定供給および食の安全を脅かす大きな原因となっており, 多大な経済的損失をあたえている. しかし, 乳房炎や牛白血病等の慢性疾患では複数の遺伝的背景が複雑にからみあって病態の悪性化や発症が規定されており, 有効な治療法の確立は非常に困難である. このような感染症を克服するためには, それらの病態の進行に関わる疾患責任遺伝子を同定し, 抵抗性に関わる対立遺伝子を有する家畜を選別して, 感染症になりにくいウシを作出するという戦略が極めて有効であると考えられる.
ISSN:1345-9961