生態心理学的発達研究の方法:ボトムアップのアプローチ

一般的に心理学で「発達」と言う時には身体や精神,行動が子どもから成人へ,成人から老人へ,段階的あるいは直線的に変化していくという見方が強い.しかし,個々の人が変化していく様子は教科書的な記述に必ずしも当てはまるものではないし,あらかじめの計画書のようなものに従って淡々と展開するものでもない.ヒトに共通する普遍性がある一方で,個人にとってはそれぞれユニークな初めてのプロセスを経て,その人らしさのようなものを形作ってゆく.生態心理学はその際のヒトと環境の相互作用に焦点を当てる.本稿では,まずEleanor GibsonとAdolphの移動の発達研究を通して,アフォーダンス知覚の発達について説明する...

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Published in生態心理学研究 Vol. 17; no. 1; pp. 169 - 185
Main Author 西尾 千尋
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本生態心理学会 01.07.2025
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ISSN1349-0443
2434-012X
DOI10.24807/jep.17.1_169

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Summary:一般的に心理学で「発達」と言う時には身体や精神,行動が子どもから成人へ,成人から老人へ,段階的あるいは直線的に変化していくという見方が強い.しかし,個々の人が変化していく様子は教科書的な記述に必ずしも当てはまるものではないし,あらかじめの計画書のようなものに従って淡々と展開するものでもない.ヒトに共通する普遍性がある一方で,個人にとってはそれぞれユニークな初めてのプロセスを経て,その人らしさのようなものを形作ってゆく.生態心理学はその際のヒトと環境の相互作用に焦点を当てる.本稿では,まずEleanor GibsonとAdolphの移動の発達研究を通して,アフォーダンス知覚の発達について説明する.次に,「赤ちゃん事典」を紹介し,日常の環境で観察によって研究することで分かることについて考える.最後に,データ取得と分析の方法を紹介し,ボトムアップ的な問いの立て方について議論する.
ISSN:1349-0443
2434-012X
DOI:10.24807/jep.17.1_169