院内発症脳梗塞の臨床的特徴と転帰 ─HARP study

院内発症脳卒中患者は,市中発症脳卒中患者と比較し,心血管リスクの合併や,悪性腫瘍関連脳梗塞が多いとされる.本研究は,広島市の多施設共同脳卒中レジストリ(The Hiroshima Acute Stroke Retrospective and Prospective Registry Study:HARP study)を用いて,院内発症脳梗塞の割合,臨床的特徴を調査し,転帰に関連する因子を明らかにすることを目的とした.2020年7月から2022年3月までに広島市内の5つの一次脳卒中センターに入院した発症7日以内の急性期脳梗塞患者を院内発症脳梗塞と市中発症脳梗塞に分類し,患者背景因子,再開通療法施...

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Published in脳卒中の外科 Vol. 52; no. 4; pp. 288 - 295
Main Authors 兼好, 健太, 祢津, 智久, 青木, 志郎, 石井, 大造, 今村, 栄次, 下村, 怜, 溝上, 達也, 山下, 拓史, 原, 直之, 松重, 俊憲, 野村, 栄一, 河野, 智之, 廣常, 信之, 越智, 一秀, 仲, 博満, 木下, 直人, 富永, 篤, 岐浦, 禎展, 堀江, 信貴, 丸山, 博文
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本脳卒中の外科学会 2024
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Summary:院内発症脳卒中患者は,市中発症脳卒中患者と比較し,心血管リスクの合併や,悪性腫瘍関連脳梗塞が多いとされる.本研究は,広島市の多施設共同脳卒中レジストリ(The Hiroshima Acute Stroke Retrospective and Prospective Registry Study:HARP study)を用いて,院内発症脳梗塞の割合,臨床的特徴を調査し,転帰に関連する因子を明らかにすることを目的とした.2020年7月から2022年3月までに広島市内の5つの一次脳卒中センターに入院した発症7日以内の急性期脳梗塞患者を院内発症脳梗塞と市中発症脳梗塞に分類し,患者背景因子,再開通療法施行率,転帰を調査した.登録期間中の急性期脳卒中2,470例中,院内発症脳梗塞は103例(4.2%)であった.院内発症脳梗塞は,市中発症脳梗塞と比べて糖尿病(p=0.004),心房細動(p=0.025),虚血性心疾患(p=0.007),慢性心不全(p<0.001),血液透析(p=0.024)の罹患率が高く,入院時NIHSSが有意に高値であった(中央値7 vs. 3,p<0.001).全症例中385例(15.6%)で再開通療法が施行され,院内発症脳梗塞で有意に施行率が高かった(35.9% vs. 14.7%,p<0.001).発症前mRS 0-2で,3カ月後転帰を調査し得た1,210例の多変量解析では,院内発症脳梗塞の存在が3カ月後転帰不良(mRS3-6)に独立して関連した(OR 2.20,95% CI 1.05-4.62).院内発症脳梗塞例は,重症例が多く,再開通療法施行例も多かったが,転帰は不良であった.院内発症脳梗塞は,基礎疾患が多彩であり,症例に応じた適切な対応が必要である.
ISSN:0914-5508
1880-4683
DOI:10.2335/scs.52.288