咬みしめ時の歯列における咬合力分布
歯列における咬合力分布の正常像を得る目的で, 顎口腔系に機能異常とその既往を有さない有歯顎者42名の被験者より, 咬みしめ時の咬合力を記録した.被験者には「できるだけ強く」咬みしめるよう指示した.咬合力記録には, 咬合力測定用感圧フィルムDental Prescale50H, type Rと専用の解析装置Dental Occlusion Pressuregraph, Occluzer, FPD-703 (ともに富士写真フイルム社製) を用いた.各歯の咬合力の総咬合力に対する比 (咬合力比) ならびに左右各側歯列における咬合力の差が総咬合力に占める比 (非対称性指数) を求め, 咬合力分布の分析...
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Published in | 日本顎口腔機能学会雑誌 Vol. 2; no. 2; pp. 111 - 117 |
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Main Authors | , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本顎口腔機能学会
31.01.1996
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ISSN | 1340-9085 1883-986X |
DOI | 10.7144/sgf.2.111 |
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Summary: | 歯列における咬合力分布の正常像を得る目的で, 顎口腔系に機能異常とその既往を有さない有歯顎者42名の被験者より, 咬みしめ時の咬合力を記録した.被験者には「できるだけ強く」咬みしめるよう指示した.咬合力記録には, 咬合力測定用感圧フィルムDental Prescale50H, type Rと専用の解析装置Dental Occlusion Pressuregraph, Occluzer, FPD-703 (ともに富士写真フイルム社製) を用いた.各歯の咬合力の総咬合力に対する比 (咬合力比) ならびに左右各側歯列における咬合力の差が総咬合力に占める比 (非対称性指数) を求め, 咬合力分布の分析に供した. 片側歯列について各歯の咬合力比を比較したところ, 第2大臼歯で最大値を示し, おおむね後方歯から前方歯にかけて順に減少した.第3大臼歯に咬合接触を有する群では, その咬合力比は第2大臼歯より小さく第1大臼歯より大きかった.この咬合力の前後的分布は, 各歯の咬合力の負担能力, 咀嚼筋活動, 槓桿作用, 顎口腔系の変形などの統合の結果もたらされたものと推察された. 一方, 咬合力の非対称性指数は平均9.3±6.7%で, 正常機能を営む顎口腔の力学的特徴である, 咬合力の左右的に均等な分布が認められた.また, 咬合接触を有する第3大臼歯数別に非対称性指数を比較したところ, その数が多い順に非対称性は小さく, 咬合接触を有する臼歯数の増大に伴う咬合力分布の左右的均等化が示唆された. 本研究において明らかにされた咬合力分布の正常像は, 咬合力分布の測定を咬合診査に応用する際に, 基準としうるものであり, その臨床的有用性が推察された. |
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ISSN: | 1340-9085 1883-986X |
DOI: | 10.7144/sgf.2.111 |