変容する自己の記述のために:技術の影響の理解への生態学的アプローチ

本稿は,技術の理解に関する標準的な理論との比較考察を通じて,アフォーダンスの概念で技術の影響を理解する可能性と限界とを確認することを目的とする.標準理論と言い得る技術の拡張論には,技術に関する論点を開拓し,派生的理論の基礎となってきた実績がある一方,効果を判別するための作業を省略し,拡張的効果を前提に議論を進めるという瑕疵が認められる.技術による自己の変容を記述できるアフォーダンスの技術論は,判別の作業に貢献する形で拡張論と接合することができるが,この接合は片務的なものではない.二つの技術論の差異を明らかにするところから両者の接点を特定し,アフォーダンスの技術論にも接合のメリットがあること,す...

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Published in生態心理学研究 Vol. 17; no. 1; pp. 61 - 74
Main Author 柴田 崇
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本生態心理学会 01.07.2025
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ISSN1349-0443
2434-012X
DOI10.24807/jep.17.1_61

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Summary:本稿は,技術の理解に関する標準的な理論との比較考察を通じて,アフォーダンスの概念で技術の影響を理解する可能性と限界とを確認することを目的とする.標準理論と言い得る技術の拡張論には,技術に関する論点を開拓し,派生的理論の基礎となってきた実績がある一方,効果を判別するための作業を省略し,拡張的効果を前提に議論を進めるという瑕疵が認められる.技術による自己の変容を記述できるアフォーダンスの技術論は,判別の作業に貢献する形で拡張論と接合することができるが,この接合は片務的なものではない.二つの技術論の差異を明らかにするところから両者の接点を特定し,アフォーダンスの技術論にも接合のメリットがあること,すなわち両者に相補的な関係があることを明らかにする.
ISSN:1349-0443
2434-012X
DOI:10.24807/jep.17.1_61