洋風化粧の普及におけるジェンダーの利用 美容師の役割に着目して

本稿は、1900年代から1930年代前後まで、洋風化粧法が日本で普及していくなかで、いかに化粧をめぐる価値観の転換がジェンダーと結びつきながら行われたかを分析した。具体的には、近代化の過程で特定の階層を問わず、多くの女性が化粧という文化領域に巻き込まれざるを得なくなった過程に注目した。 そこで、言説分析の手法を採用し、近代化の過程に伴い出現した「美容師」なる職業の役割に焦点をあてた。「美容家」なる職業は、当初はそのほとんどが男性によって占められており、常に世の人から賤業視されてきた。そのため、女性「美容師」が自らの正当性を主張するため、「美容師=女性」の言説を積極的にメディア空間内に創り出して...

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Published in女性学 Vol. 31; pp. 69 - 87
Main Author 楊, 雅韻
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本女性学会 31.03.2024
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ISSN1343-697X
2436-5084
DOI10.50962/wsj.31.0_69

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Summary:本稿は、1900年代から1930年代前後まで、洋風化粧法が日本で普及していくなかで、いかに化粧をめぐる価値観の転換がジェンダーと結びつきながら行われたかを分析した。具体的には、近代化の過程で特定の階層を問わず、多くの女性が化粧という文化領域に巻き込まれざるを得なくなった過程に注目した。 そこで、言説分析の手法を採用し、近代化の過程に伴い出現した「美容師」なる職業の役割に焦点をあてた。「美容家」なる職業は、当初はそのほとんどが男性によって占められており、常に世の人から賤業視されてきた。そのため、女性「美容師」が自らの正当性を主張するため、「美容師=女性」の言説を積極的にメディア空間内に創り出していた。それらの「美容師」は、洋風化粧法を普及させる中で、新中間層の女性に、化粧をする正当性、必要性、化粧の道具である化粧品を購入する合理性と経済性を唱えた。このように、前近代においてジェンダーを問わず、社会的身分を可視化するために行った化粧が、近代化の過程で、化粧する主体と、化粧業界に従事する主体ともに女性というイメージに収斂していった。
ISSN:1343-697X
2436-5084
DOI:10.50962/wsj.31.0_69