Epigenetics Now and Then: Toward a New Resolution
エピジェネティクスは「細胞間遺伝するゲノム外の情報」を対象とした研究分野を指す。修飾パターンの複製分子メカニズムを持つDNAメチル化を真のエピジェネティックマークと呼ぶこともある、研究の進展とひろがりにより現在の研究範囲は基本的なDNAメチル化・ヒストン修飾にとどまらない。多細胞生物の体はゲノム情報を利用して多くの機能的な組織・器官をつくっている。単一の細胞はどの時点で異なる細胞種を生じるのか、細胞のアイデンティティとなる機能はいかに確立され維持され、どのように破綻するのか?当然ながらゲノム機能発現には転写因子などのトランス因子が大きな役割を持つが、予測された結合配列の配置のみでは結合箇所の予...
Saved in:
Published in | JSBi Bioinformatics Review Vol. 2; no. 1; pp. 7 - 14 |
---|---|
Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
Japanese Society for Bioinformatics
2021
特定非営利活動法人 日本バイオインフォマティクス学会 |
Online Access | Get full text |
Cover
Loading…
Summary: | エピジェネティクスは「細胞間遺伝するゲノム外の情報」を対象とした研究分野を指す。修飾パターンの複製分子メカニズムを持つDNAメチル化を真のエピジェネティックマークと呼ぶこともある、研究の進展とひろがりにより現在の研究範囲は基本的なDNAメチル化・ヒストン修飾にとどまらない。多細胞生物の体はゲノム情報を利用して多くの機能的な組織・器官をつくっている。単一の細胞はどの時点で異なる細胞種を生じるのか、細胞のアイデンティティとなる機能はいかに確立され維持され、どのように破綻するのか?当然ながらゲノム機能発現には転写因子などのトランス因子が大きな役割を持つが、予測された結合配列の配置のみでは結合箇所の予測が不十分であることはよく知られている。配列以外のゲノムへのアクセス状況の違いを司るエピジェネティック分子機構の可変と不変の仕組を理解するために、これまでの知識と情報のリソースに併せ、さらなる解像度を持つ解析手法を用いることによって情報の連係を見出すことが今後の課題とみている。私たちのからだが30億塩基以上の高ノイズなゲノム配列情報をうまく使って多くの細胞を生み出し、生命の営みを続けているその中で、大きな間違いをせずに発生・発達を繰り返すダイナミックな仕組みに思いを馳せていただければと思う。 |
---|---|
ISSN: | 2435-7022 |
DOI: | 10.11234/jsbibr.2021.primer2 |