認知症を有する高齢者を肯定的に表現する職員間コミュニケーションの効果

本研究の目的は,認知症高齢者の言動を「もっている能力」という側面から肯定的に表現してスタッフに伝えるコミュニケーションの効果を明らかにすることである.アクションリサーチの考え方にそった研究デザインにより実施し,再構成された場面からそこで起こった相互作用を効果として分析した.『実践者が認知症高齢者の能力を発見し,スタッフに伝えた場面』(4場面),『スタッフが認知症高齢者を問題視することが実践者に予測されたため,肯定的な見方を表現した場面』(7場面),『スタッフが肯定的な見方を表現し,実践者と共有した場面』(5場面)の計16場面が再構成され,認知症高齢者の能力をスタッフも認識できること,認知症高齢...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本老年看護学会誌(老年看護学) Vol. 10; no. 2; pp. 51 - 61
Main Authors 湯浅 美千代, 野口 美和子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本老年看護学会 15.03.2006
一般社団法人 日本老年看護学会
Japan Academy of Gerontological Nursing
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN1346-9665
2432-0811
DOI10.20696/jagn.10.2_51

Cover

More Information
Summary:本研究の目的は,認知症高齢者の言動を「もっている能力」という側面から肯定的に表現してスタッフに伝えるコミュニケーションの効果を明らかにすることである.アクションリサーチの考え方にそった研究デザインにより実施し,再構成された場面からそこで起こった相互作用を効果として分析した.『実践者が認知症高齢者の能力を発見し,スタッフに伝えた場面』(4場面),『スタッフが認知症高齢者を問題視することが実践者に予測されたため,肯定的な見方を表現した場面』(7場面),『スタッフが肯定的な見方を表現し,実践者と共有した場面』(5場面)の計16場面が再構成され,認知症高齢者の能力をスタッフも認識できること,認知症高齢者の能力やそれを引き出す方法がスタッフから表現されること,スタッフの認知症高齢者-の関わりが増えること・丁寧に関わることなどが効果として抽出された.また,その結果として,認知症高齢者への効果,すなわち認知症高齢者の気分や応答がよくなること,拒否反応が現れないことがあり,コンサマトリーなコミュニケーションを通して認知症高齢者についての見方が肯定的に向かうことで効果が広がっていくことが考えられた.しかし,このようなコミュニケーションにおいてもスタッフに気づきが得られない可能性のほか,認知症高齢者の能力を過大評価する可能性,真のニードを把握できない可能性があり,これらの課題をふまえて適用する必要があると考えられた.
Bibliography:研究ノート
ISSN:1346-9665
2432-0811
DOI:10.20696/jagn.10.2_51