臓器移植法による移植医療と看護のあり方に関する見解

日本看護科学学会看護倫理検討委員会は,1992年,臨時脳死及び臓器移植調査会の最終答申「脳死及び臓器移植に関する重要事項について」(日本看護科学学会看護倫理検討委員会,1992)に対する見解をまとめ,臓器移植のための脳死を人の死として容認することによる問題を指摘するとともに,取り組むべき課題を提示した.その後さまざまな議論を経て,1997年7月16日に「臓器移植に関する法律」が制定され(臓器の移植に関する法律, 1997;臓器移植制度研究会, 2001),本人の書面による意思表明と家族の同意がある場合にのみ,脳死を人の死と認め脳死者からの臓器移植の道が開かれるようになった.この法律の付則第2条...

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Published in日本看護科学会誌 Vol. 21; no. 3; pp. 80 - 90
Main Authors 野嶋 佐由美, 岡谷 恵子, 片田 範子, 川村 佐和子, 鈴木 志津枝, 高田 早苗, 高野 順子, 手島 恵, 中野 綾美, 横尾 京子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本看護科学学会 2001
公益社団法人 日本看護科学学会
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Summary:日本看護科学学会看護倫理検討委員会は,1992年,臨時脳死及び臓器移植調査会の最終答申「脳死及び臓器移植に関する重要事項について」(日本看護科学学会看護倫理検討委員会,1992)に対する見解をまとめ,臓器移植のための脳死を人の死として容認することによる問題を指摘するとともに,取り組むべき課題を提示した.その後さまざまな議論を経て,1997年7月16日に「臓器移植に関する法律」が制定され(臓器の移植に関する法律, 1997;臓器移植制度研究会, 2001),本人の書面による意思表明と家族の同意がある場合にのみ,脳死を人の死と認め脳死者からの臓器移植の道が開かれるようになった.この法律の付則第2条には「この法律による臓器の移植については,この法律の施行後3年を目途として,この法律の施行の状況を勘案し,その全般について検討が加えられ,その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるべきものとする」とある.そして,現在臓器移植法の改正案が検討されている. 一方,21世紀は生命の世紀であるとともに,倫理の世紀であるとも言及されている.ヒトゲノム研究,遺伝子解析研究,クローン技術,ヒトES細胞等と,人間の生命に対する科学的な探究は,我々の人間性に,人としての存在・尊厳に刻々と侵入しつつある.我々は,倫理的な視点からこのような問題を吟味していくことを求められている.さらに,人工臓器の開発や再生医療といった医学治療法も臓器移植に代わるものとして注目されてきている.このような状況をふまえて,看護の立場から,移植医療や臓器移植法のあり方を検討したので,ここに報告する.
Bibliography:委員会報告
ISSN:0287-5330
2185-8888
DOI:10.5630/jans1981.21.3_80