看護領域の用語に関する研究

はじめに わが国では,研究に対する看護婦の関心が高まって以来,およそ20年の歳月が経過しているが,この間,経験的データの蓄積はあっても,理論構築に関する研究は少なく,したがって理論用語に関する検討もごくまれにあるのみで37~40),種々の用語の使い方も個々の研究者の恣意に委ねられているのが現状である.看護領域でのさまざまな研究を方向づけ,かつその結果を累積的に集大成する努力という点では,わが国の看護研究の現状は,アメリカとは大きくへだたっているように思える.しかしそのアメリカにおいても,看護の領域で用いられている用語の多くは,まだ概念的統一をみるにはいたっていない.ただし異なる点は,多様な見解...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本看護科学会誌 Vol. 7; no. 1; pp. 2 - 17
Main Author 中西 睦子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本看護科学学会 30.09.1987
公益社団法人 日本看護科学学会
Online AccessGet full text
ISSN0287-5330
2185-8888
DOI10.5630/jans1981.7.1_2

Cover

More Information
Summary:はじめに わが国では,研究に対する看護婦の関心が高まって以来,およそ20年の歳月が経過しているが,この間,経験的データの蓄積はあっても,理論構築に関する研究は少なく,したがって理論用語に関する検討もごくまれにあるのみで37~40),種々の用語の使い方も個々の研究者の恣意に委ねられているのが現状である.看護領域でのさまざまな研究を方向づけ,かつその結果を累積的に集大成する努力という点では,わが国の看護研究の現状は,アメリカとは大きくへだたっているように思える.しかしそのアメリカにおいても,看護の領域で用いられている用語の多くは,まだ概念的統一をみるにはいたっていない.ただし異なる点は,多様な見解がうち出されているところにある. 看護は科学的発達段階としてみれば,プレパラダイムのステージにあり,同一現象であっても異なった仕方で眺められたり解釈される.それは混乱とフラストレーションの時期ともいわれる24).看護における科学的研究の目標は,究極的には,看護が扱う現象を説明し,さらにその現象を望ましい方向に変えていくところにあるとするなら,看護が扱う現象の見方にかかわる理論的作業も,経験的データの蓄積とともに重要である.用語に関する検討は,そのためのひとつの基礎的作業として位置づけられる. 本研究の目的は,看護における諸研究の出発点となり,帰結点ともなるようないくつかの基本的用語について,これまでの理論的検討を概観し,対象とされる事象の概念化の過程に存在する問題点を明らかにするところにある.これまでになされた理論的検討という点では,結果としてほとんど全面的にアメリカの文献に頼った. 選択した用語は,1)看護理論(nursing theory),2)看護の概念枠組(conceptual framework for nursing),3)看護研究(nursing research),4)看護科学(nursing science),5)看護学(the discipline of nursing)の5つである.おのおのの用語は,(1)既存の定義,または特徴についての記述,(2)展望および概念化の過程での問題点から捉えていく.
Bibliography:総説
ISSN:0287-5330
2185-8888
DOI:10.5630/jans1981.7.1_2