タモギタケ胞子欠損性変異体に関する遺伝学的および細胞学的解析

紫外線照射により取得した担子胞子形成能が野生型株の1/1000以下となるタモギタケ胞子欠損性変異株を遺伝学および細胞学的な見地から,その変異形質を検証した。その結果,変異形質の遺伝性は一因子性の優性遺伝であることが示された。野生型株ヒダの走査型電子顕微鏡観察では,形状の揃った担子器や胞子が多数観察されたが,変異株ヒダでは,長径が顕著に異なる胞子,皺状に萎縮した胞子,さらに小柄が4個より少ない担子器が多く見られた。ギムザ染色による担子胞子形成過程における核行動の観察では,減数分裂後に胞子内に移動せずに担子器内に留まる核が多数観察されたほか,核を有しないまたは,成長が停止した胞子や小柄を有する担子...

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Published inNippon Kingakkai kaiho Vol. 58; no. 2; pp. 41 - 50
Main Authors 米山, 彰造, 安東, 夏都美, 東, 智則, 佐藤, 真由美, 牛島, 秀爾, 松本, 晃幸
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 01.11.2017
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ISSN0029-0289

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Summary:紫外線照射により取得した担子胞子形成能が野生型株の1/1000以下となるタモギタケ胞子欠損性変異株を遺伝学および細胞学的な見地から,その変異形質を検証した。その結果,変異形質の遺伝性は一因子性の優性遺伝であることが示された。野生型株ヒダの走査型電子顕微鏡観察では,形状の揃った担子器や胞子が多数観察されたが,変異株ヒダでは,長径が顕著に異なる胞子,皺状に萎縮した胞子,さらに小柄が4個より少ない担子器が多く見られた。ギムザ染色による担子胞子形成過程における核行動の観察では,減数分裂後に胞子内に移動せずに担子器内に留まる核が多数観察されたほか,核を有しないまたは,成長が停止した胞子や小柄を有する担子器が観察された。以上のことより,本研究の胞子欠損性変異株では胞子形成・成熟段階に関与する遺伝子,言い換えると核の移動に関与する遺伝子の突然変異によって,胞子形成能が野生型株の1/1000以下に減少したことが示唆された。
Bibliography:920282
ZZ00017925
ISSN:0029-0289