わが国の伴侶動物医療における抗菌薬の使用実態調査

効果的な薬剤耐性対策を実施するには,抗菌薬の使用量を把握することがきわめて重要である。しかし,これまで公表された公的な抗菌薬の販売量調査では,承認された動物用抗菌薬のみが対象であり,人体用薬が汎用される伴侶動物分野での抗菌薬の使用実態を明らかにすることができなかった。今回,全国の184カ所の伴侶動物診療施設(小動物病院)に対して2017年度の抗菌薬の使用に関する質問票調査を実施した。その結果,全国の小動物病院での年間抗菌薬使用量は29.9tと推定された。このうち,36.7%は承認された動物用抗菌薬であり,想像以上に使用されていた。使用する抗菌薬は,第一世代セファロスポリン系(主にセファレキシン...

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Published inNippon Juishikai zasshi Vol. 76; no. 7; pp. 304 - 310
Main Authors 蒔田, 浩平, 菅原, 菜未, 中村, 和弘, 境, 政人, 田村, 豊
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 01.07.2023
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ISSN0446-6454

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Summary:効果的な薬剤耐性対策を実施するには,抗菌薬の使用量を把握することがきわめて重要である。しかし,これまで公表された公的な抗菌薬の販売量調査では,承認された動物用抗菌薬のみが対象であり,人体用薬が汎用される伴侶動物分野での抗菌薬の使用実態を明らかにすることができなかった。今回,全国の184カ所の伴侶動物診療施設(小動物病院)に対して2017年度の抗菌薬の使用に関する質問票調査を実施した。その結果,全国の小動物病院での年間抗菌薬使用量は29.9tと推定された。このうち,36.7%は承認された動物用抗菌薬であり,想像以上に使用されていた。使用する抗菌薬は,第一世代セファロスポリン系(主にセファレキシン)が41.1%と最も多く,ペニシリン系(主にアモキシシリン)が33.6%と続いた。これにフルオロキノロン系(主にエンロフロキサシン)の8.0%を加えると,80%以上をこれら3系統で占めた。医療上重要な抗菌薬(重要抗菌薬)の使用は限定的であったが,食用動物に比べれば多い傾向にあった。抗菌薬の使用量に影響する因子を解析したところ,獣医師一人当たり年間収入が多い病院ほど獣医師一人当たり年間抗菌薬使用量は多い傾向にあった。また,重要抗菌薬でみると,院長が45~51歳の年齢区分で,病院開設からの年数が短い診療施設ほど重要抗菌薬の使用量が多かった。以上の小動物病院での抗菌薬使用実態調査は世界的にも類をみない臨床現場での使用量を反映したものであり,抗菌薬の慎重使用を推進するに当たっての重要な情報となった。
Bibliography:ZZ00014801
947682
ISSN:0446-6454