冷水病菌を保菌していたアユ放流種苗を異なる水温で継続飼育した場合の生残率

河川に放流されたアユの漁期までの生残率および冷水病の発症状況を把握するために、1997-2001年に神通川と庄川に放流された種苗の一部を、コンクリートの飼育池で放流時期から8月1日まで継続飼育した。飼育試験には由来の異なる4つの種苗を用い、13℃と17℃の2つの水温で飼育した。5カ年での最も低い生残率は13℃の飼育群で得られた10.2%で、最も高い生残率は17℃の飼育群で得られた99.2%であった。しかし、13℃の飼育群でも最も高い生残率を示した年もあれば、17℃の飼育群よりも高い生残率を示した年もあり、一定の傾向を示さなかった。17℃の水温で飼育した11群の生残率の平均値は60.6%で、13...

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Published in富山県水産試験場研究報告 = Bulletin of Toyama Prefectural Fisheries Experiment Station no. 17; pp. 11 - 17
Main Authors 田子, 泰彦, 村木, 誠一, 大津, 順
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 01.03.2006
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ISSN0915-6542

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Summary:河川に放流されたアユの漁期までの生残率および冷水病の発症状況を把握するために、1997-2001年に神通川と庄川に放流された種苗の一部を、コンクリートの飼育池で放流時期から8月1日まで継続飼育した。飼育試験には由来の異なる4つの種苗を用い、13℃と17℃の2つの水温で飼育した。5カ年での最も低い生残率は13℃の飼育群で得られた10.2%で、最も高い生残率は17℃の飼育群で得られた99.2%であった。しかし、13℃の飼育群でも最も高い生残率を示した年もあれば、17℃の飼育群よりも高い生残率を示した年もあり、一定の傾向を示さなかった。17℃の水温で飼育した11群の生残率の平均値は60.6%で、13℃で飼育した11群の44.2%よりも高かったが、両者には5%水準で有意な差は認められなかった。飼育水温13℃および17℃にかかわらず、検査を行ったすべての飼育群から10-70%の率で冷水病菌が検出されたことから、生残率低下の主な原因は冷水病の発症・死亡にあると推定された。神通川と庄川に放流されていたアユ種苗の多くは冷水病菌に感染しており、両河川でアユ資源を効率的に増大させるには、放流時の河川水温の高低を考慮するよりも、冷水病を根本的に克服することが急務だと考えられた。
Bibliography:734910
ZZ00013149
ISSN:0915-6542