食品の放射性物質による汚染のリスクをどう考えて,どう伝えるか

「1. はじめに」 ここでは筆者が現在, 課題としているリスクのガバナンスという観点から, 放射性物質による食品汚染 (以下, 食品の放射能汚染と言う) についての理解と, そのコミュニケーションのあり方を考える. 食品はすべての人にとり日常の営みを支える基礎だが, 放射性汚染は通常の経験や知識を超える事柄である. リスクのコミュニケーションに関しては, これまで多くの社会心理学的な研究がなされているが, その成果を安直に引用し「恐怖性」と「未知性」の2つの心理要因のみから, 人々の食品リスク認知を説明する見方がある. 今回の食品の放射性汚染に関しては, 「食品汚染による健康リスクの可能性」と...

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Published inShokuhin eiseigaku zasshi Vol. 54; no. 2; pp. 89 - 96
Main Author 関澤, 純
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本食品衛生学会 25.04.2013
日本食品衛生学会
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ISSN0015-6426
1882-1006
DOI10.3358/shokueishi.54.89

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Summary:「1. はじめに」 ここでは筆者が現在, 課題としているリスクのガバナンスという観点から, 放射性物質による食品汚染 (以下, 食品の放射能汚染と言う) についての理解と, そのコミュニケーションのあり方を考える. 食品はすべての人にとり日常の営みを支える基礎だが, 放射性汚染は通常の経験や知識を超える事柄である. リスクのコミュニケーションに関しては, これまで多くの社会心理学的な研究がなされているが, その成果を安直に引用し「恐怖性」と「未知性」の2つの心理要因のみから, 人々の食品リスク認知を説明する見方がある. 今回の食品の放射性汚染に関しては, 「食品汚染による健康リスクの可能性」という一般的な問題だけでなく, 事故の背景には大地震に伴う原発事故との関連という複雑で大きな事情がある. 特にわが国では, 歴史・社会的な背景を踏まえた考察が重要であり無視できない.
Bibliography:851910
ZZ00009680
ISSN:0015-6426
1882-1006
DOI:10.3358/shokueishi.54.89