食品中自由水に含まれるトリチウムの共沸蒸留による分離・分析法

福島第一原子力発電所事故以後,トリチウム(3H)を含んだ汚染水の環境中への放流の危険性が浮上し,食品の3H安全性評価が求められている.本研究では,食品中自由水に存在する3Hの実用的な分析法を確立するため,利便性と検出感度を指標に液体シンチレーション法の最適化を行い,食品中の自由水単離法として共沸蒸留法の検討を行った.検出下限値は年間1 mSvの約0.01%となる10 q/Lを満たすように3H測定条件を設定した.3H添加回収実験では,3H回収率が果実・野菜・肉・魚介類で85~90%,米や穀類で75~85%であった.一方,含水量の低い菓子類では,3H回収率が50%以下であったが,蒸留前に加水処理を...

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Published inShokuhin eiseigaku zasshi Vol. 57; no. 4; pp. 81 - 88
Main Authors 蜂須賀, 暁子, 曽我, 慶介, 最上(西巻), 知子, 亀井, 俊之
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本食品衛生学会 25.08.2016
日本食品衛生学会
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ISSN0015-6426
1882-1006
DOI10.3358/shokueishi.57.81

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Summary:福島第一原子力発電所事故以後,トリチウム(3H)を含んだ汚染水の環境中への放流の危険性が浮上し,食品の3H安全性評価が求められている.本研究では,食品中自由水に存在する3Hの実用的な分析法を確立するため,利便性と検出感度を指標に液体シンチレーション法の最適化を行い,食品中の自由水単離法として共沸蒸留法の検討を行った.検出下限値は年間1 mSvの約0.01%となる10 q/Lを満たすように3H測定条件を設定した.3H添加回収実験では,3H回収率が果実・野菜・肉・魚介類で85~90%,米や穀類で75~85%であった.一方,含水量の低い菓子類では,3H回収率が50%以下であったが,蒸留前に加水処理を行うことによって,3H回収率と精度が向上した.その結果,用いた全13食品群で,3H回収率75%以上,RSDが10%以内であった.したがって,本分析法は食品の3H安全性評価のための感度,精度を有し,広範囲の食品に適用可能と考えられる.本分析法を用いて流通食品42種類の3H分析を実施したところ,すべて検出下限値以下であった.
Bibliography:902920
ZZ00009680
ISSN:0015-6426
1882-1006
DOI:10.3358/shokueishi.57.81