口蹄疫の汎用型伝播シミュレーターの開発

近年,獣医疫学分野では,防疫対策の意思決定を支援するツールとして,感染症の伝播モデルの有用性が増している。家畜の重要感染症である口蹄疫については,発生時の被害を最小限に抑えるため,地域の畜産状況に応じた防疫対策を迅速に講じられるよう事前の準備が大切である。そこで本研究では,国や都道府県の行政担当者が口蹄疫の感染拡大をシミュレーションすることで,地域における口蹄疫の防疫対策の立案に活用できるよう,汎用性の高い口蹄疫の伝播シミュレーター(Japan simulation model of animal infectious diseases simulator FMD,JSMIN-FMD)を開発し...

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Published inJapan society of veterinary epidemiology Vol. 22; no. 2; pp. 93 - 101
Main Authors 早山, 陽子, 山本, 健久, 筒井, 俊之
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 獣医疫学会 20.12.2018
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Summary:近年,獣医疫学分野では,防疫対策の意思決定を支援するツールとして,感染症の伝播モデルの有用性が増している。家畜の重要感染症である口蹄疫については,発生時の被害を最小限に抑えるため,地域の畜産状況に応じた防疫対策を迅速に講じられるよう事前の準備が大切である。そこで本研究では,国や都道府県の行政担当者が口蹄疫の感染拡大をシミュレーションすることで,地域における口蹄疫の防疫対策の立案に活用できるよう,汎用性の高い口蹄疫の伝播シミュレーター(Japan simulation model of animal infectious diseases simulator FMD,JSMIN-FMD)を開発した。伝播シミュレーターは,口蹄疫の感染拡大を農場単位で再現するシミュレーションモデルである。シミュレーションでは,地域の畜産農家の情報と,感染拡大や防疫対策の条件を入力する。農場間の感染拡大は,人や車両の移動に伴う伝播と農場間の距離に応じた伝播によって再現される。防疫対策は,摘発農場における殺処分,摘発農場の周辺農場に対する予防的殺処分,及び周辺農場に対するワクチン接種について評価できる。シミュレーションの結果は,感染拡大の推移がグラフと地図で出力され,地域内における感染の広がりをアニメーションで表示する機能を備えている。また,防疫対応に必要な人員と費用を推定した結果をグラフで表示することもできる。伝播シミュレーターの活用は,地域における防疫対策の立案のみならず,地域ぐるみでの危機意識の共有にも役立つと思われる。
Bibliography:926392
ZZ00015317
ISSN:1343-2583
1881-2562
DOI:10.2743/jve.22.93