東北地域における多収・高品質の水稲品種を育成するために着目すべき形質の解析

東北地域の水稲生産力検定試験において,1穂籾数,登熟歩合等を新たに測定し,従来の測定項目に追加することにより,延べ108の品種・系統について,収量・品質に関与する要因を解析した.多収品種の「ふくひびき」と同等以上に多収であり,かつ普及品種の「あきたこまち」,「ひとめぼれ」と同等以上に品質の優れる品種を育成するため,精玄米重725 g/m2以上,品質4.5以下を目標値に設定した.精玄米重は,1穂籾数および25.0 g以下の範囲の千粒重との間に有意な正の相関関係が認められたが,穂数あるいは登熟歩合との間に有意な相関関係は認められなかった.精玄米重が725 g/m2以上の品種・系統は1穂籾数が77以...

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Published inJapanese journal of crop science Vol. 86; no. 3; pp. 236 - 242
Main Authors 福嶌, 陽, 横上, 晴郁, 津田, 直人
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published Tokyo 日本作物学会 01.07.2017
Japan Science and Technology Agency
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Summary:東北地域の水稲生産力検定試験において,1穂籾数,登熟歩合等を新たに測定し,従来の測定項目に追加することにより,延べ108の品種・系統について,収量・品質に関与する要因を解析した.多収品種の「ふくひびき」と同等以上に多収であり,かつ普及品種の「あきたこまち」,「ひとめぼれ」と同等以上に品質の優れる品種を育成するため,精玄米重725 g/m2以上,品質4.5以下を目標値に設定した.精玄米重は,1穂籾数および25.0 g以下の範囲の千粒重との間に有意な正の相関関係が認められたが,穂数あるいは登熟歩合との間に有意な相関関係は認められなかった.精玄米重が725 g/m2以上の品種・系統は1穂籾数が77以上,千粒重がやや大粒の22.9 g~24.3 gの範囲であった.一方,精玄米重が725 g/m2以上の品種・系統の穂数の範囲は334本/m2~540本/m2と広かった.品質は,1穂籾数との間には有意な相関関係は認められなかったが,千粒重との間に有意な相関関係が認められた.1穂籾数が80と多い系統,あるいは千粒重が23.0 g~24.0 gとやや大粒の系統の中にも品質が4.5以下と優れる品種・系統が存在した.しかし,延べ108の品種・系統の中には,精玄米重が725 g/m2以上に多く,かつ品質が4.5以下に優れる品種・系統は存在しなかった.今後,1穂籾数や千粒重などの形質に着目して交配・選抜を行うことにより,東北地域における多収・高品質の品種を育成することが可能と推察した.
Bibliography:912047
ZZ00014890
ISSN:0011-1848
1349-0990
DOI:10.1626/jcs.86.236