‘宮内イヨカン’の着花が開花期の窒素と光合成産物の転流に及ぼす影響

宮内イヨカンの着花過多樹における, 開花期の窒素と光合成産物の転流を15Nと13Cを用いて検討した. (1) 宮内イヨカンの着花数, 特に結実し難い直花の増加は, 新梢の発生数を減少させ, また, 樹全体の結実率を低下させた. 落花による窒素の損失量は着花数に比例して増加し, 葉花比が10以下の着花過多樹では採収果実の10%以上に達した. (2) 結実率の高い有葉花では, 開花前4~5日の間の子房の肥大量が直花の子房よりも大きかった. 開花約3週間前の4月20日の施用窒素は, 満開時までに新梢や花へ移行し, 子房の生長を促進し結実率を高めた. 一方, 開花初期の5月8日の施用窒素は, 結実に対...

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Published inEngei Gakkai zasshi Vol. 55; no. 4; pp. 434 - 444
Main Authors 高木, 信雄, 清水, 真寿美, 荻野, 尚裕, 前田, 幸男, 赤松, 聡, 大和, 田厚
Format Journal Article
LanguageEnglish
Japanese
Published 一般社団法人 園芸学会 1987
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Summary:宮内イヨカンの着花過多樹における, 開花期の窒素と光合成産物の転流を15Nと13Cを用いて検討した. (1) 宮内イヨカンの着花数, 特に結実し難い直花の増加は, 新梢の発生数を減少させ, また, 樹全体の結実率を低下させた. 落花による窒素の損失量は着花数に比例して増加し, 葉花比が10以下の着花過多樹では採収果実の10%以上に達した. (2) 結実率の高い有葉花では, 開花前4~5日の間の子房の肥大量が直花の子房よりも大きかった. 開花約3週間前の4月20日の施用窒素は, 満開時までに新梢や花へ移行し, 子房の生長を促進し結実率を高めた. 一方, 開花初期の5月8日の施用窒素は, 結実に対する効果は認められなかったが, 開花終了後新梢へより多く移行した. 9月1日に施用した窒素の多くは11月中旬までに吸収され, 葉中の15N含量は翌年の2月まで変化しなかった. その後3月から5月の間に, 枝葉や細根中の15N含量は低下したのに対して, 新生器官の新葉や花中の15N含量が高まった. 4月20日及び9月1日に施用した15Nは, 開花期の花と新梢及び着生花と落花中にほとんど均一に転流した. したがって, 花中の15Nの大部分は落花によって損失した. (3) 13C標識光合成産物は, 結実の良好な有葉花の子房へ多く移行したが, 1樹の総移行量は落花器官中の方が多かった. 新葉中の13C含量は全器官中で最も高く, しかも, その割合は開花期間中変化しなかった. 旧葉中の13C含量は急速に減少し, その減少量と花の含量の増加量はほぼ一致した. 以上のように, 開花期の窒素と光合成産物の転流様式にはかなりの差異が認められ, 開花3週間前の施肥窒素による結実促進は, 光合成を介した間接的効果によると推測された. また, 宮内イヨカンの着花過多樹の開花後の新梢の生長促進に対しては, 開花期ころの窒素の施用が適切であると判断された.
Bibliography:372185
ZZ00015006
ISSN:0013-7626
1880-358X
DOI:10.2503/jjshs.55.434