トマト果実の成熟に伴うカルシウムの存在形態の変化

トマト果実の成熟•追熟過程について, 軟化と関係の深いペクチン物質, 並びに細胞壁•生体膜の構造保持や機能に作用するカルシウム (Ca) の動向を調べた. 1. トマト果実は成熟するにしたがい軟化し, 果肉の粘度は増大した. その間に, プロトペクチン含量が減少し可溶性ペクチン含量が増加した. とくに, breaker から dark pink 期にかけて顕著であった. 2. トマト果実のCaを存在形態別に分画, 測定したところ, 各熟度の果実とも塩可溶画分 (F-II) に最も多く含まれ, 次に水可溶性画分 (F-I), 酢酸可溶性画分(F-III), 塩酸可溶性画分 (F-IV) の順であ...

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Published inEngei Gakkai zasshi Vol. 56; no. 1; pp. 39 - 44
Main Authors 南出, 隆久, 上田, 悦範, 岩田, 隆
Format Journal Article
LanguageEnglish
Japanese
Published 一般社団法人 園芸学会 1987
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Summary:トマト果実の成熟•追熟過程について, 軟化と関係の深いペクチン物質, 並びに細胞壁•生体膜の構造保持や機能に作用するカルシウム (Ca) の動向を調べた. 1. トマト果実は成熟するにしたがい軟化し, 果肉の粘度は増大した. その間に, プロトペクチン含量が減少し可溶性ペクチン含量が増加した. とくに, breaker から dark pink 期にかけて顕著であった. 2. トマト果実のCaを存在形態別に分画, 測定したところ, 各熟度の果実とも塩可溶画分 (F-II) に最も多く含まれ, 次に水可溶性画分 (F-I), 酢酸可溶性画分(F-III), 塩酸可溶性画分 (F-IV) の順であった. 果実の成熟に伴う変動は break 期まではあまりみられず,breaker 期以後熟度が進むにつれF-Iの増加, F-II及びF-IVの減少がみられた. また, F-I中のCa2+イオン量は breaker 期を過ぎると急激に増加することがわかった. 3. 各熟度の果実に45Caを果梗より吸収させ, 果実の成熟に伴って, 吸収された45Caの分布を比放射活性(45Caカウント/Ca含量) で調べた. small green やmature green 果実では, 45CaはF-IIIやF-IVで高い活性を示した. breaker から light pink 期にかけて果実への45Caの吸収の総量は低下したが, F-I画分への取り込みの割合は多くなった. 4. mature green 果実に45Caを吸収させ, トマトを追熟させてCa代謝を調べたところ, mature green から light pink 期にかけてCa代謝に変化がみられ, 45Caの比放射活性のF-IIIでの低下とF-Iでの増加がみられた.
Bibliography:ZZ00015006
380722
ISSN:0013-7626
1880-358X
DOI:10.2503/jjshs.56.39