神奈川県産トホシテントウ成虫の繁殖休眠

温帯域に生息する昆虫の多くは、日長や気温、餌の状態などを通して季節変化を察知し生活史に反映させるが、休眠性の獲得は繁殖と発育を好適な季節に同調させるのに有効であると考えられている。トホシテントウは年1化性の植食性テントウムシで、その多くが成虫で越冬するテントウムシ科にあって、基本的に幼虫態で越冬する。成虫羽化後の長い前産卵期は関東産個体群の生活史の特徴であるが、神奈川県秦野市の個体群では、前産卵期の6月に寄主植物であるアマチャヅル上から成虫個体数が大きく減少し、しばしば寄主以外の植物上で観察される。京都産個体群を調査したImai(2004)は、成虫が夏季活動低下に関連した繁殖休眠を示し、産卵は...

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Published inNihon Ōyō Dōbutsu Konchū Gakkai shi Vol. 52; no. 3; pp. 142 - 145
Main Authors 竹内, 将俊, 佐藤, 美幸, 飯嶋, 一浩, 田村, 正人
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本応用動物昆虫学会 2008
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Summary:温帯域に生息する昆虫の多くは、日長や気温、餌の状態などを通して季節変化を察知し生活史に反映させるが、休眠性の獲得は繁殖と発育を好適な季節に同調させるのに有効であると考えられている。トホシテントウは年1化性の植食性テントウムシで、その多くが成虫で越冬するテントウムシ科にあって、基本的に幼虫態で越冬する。成虫羽化後の長い前産卵期は関東産個体群の生活史の特徴であるが、神奈川県秦野市の個体群では、前産卵期の6月に寄主植物であるアマチャヅル上から成虫個体数が大きく減少し、しばしば寄主以外の植物上で観察される。京都産個体群を調査したImai(2004)は、成虫が夏季活動低下に関連した繁殖休眠を示し、産卵は14.5h以上の明期で抑制されることを明らかにした。これと同様な繁殖休眠が神奈川県産の個体群にも存在するなら、成虫期と幼虫期の異なる段階で日長条件による休眠性があり、これらによって年1化性がプログラムされていると考えられる。本報では、神奈川県産個体群について、羽化から初夏に認められる前産卵期に摂食量の低下が認められるのか、あるとすればそれらは日長条件に影響を受けるのか、また産卵期間は日長条件を変えることによって変化するのかを室内飼育により明らかにした。
Bibliography:762406
ZZ00014825
ISSN:0021-4914
1347-6068
DOI:10.1303/jjaez.2008.142