米国ワシントン州におけるクマによる樹皮剥ぎ被害対策と日本における応用の可能性

ツキノワグマによるスギやヒノキ等の植栽木への樹皮剥ぎ被害が各地で問題となっており, 対策が急務である。各地の被害現状調査とこれまでのツキノワグマの生態学的知見から被害発生メカニズムに基づく対策を講じる基盤ができつつある。本論では, 米国太平洋岸北西部における期間限定給餌プログラムを含めた総合的な樹皮剥ぎ被害対策を検証し, 両地域でのクマ類の生態および樹皮剥ぎ被害の比較により, 日本における期間限定給餌プログラムによる被害対策の可能性を議論した。日本でこれまで考えられてきた樹皮剥ぎ被害の各要因を検討したところ, これまでの研究成果および米国での研究成果と考え合わせると, 食物資源説の立場をとるこ...

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Published inNihon Shinrin Gakkaishi Vol. 95; no. 5; pp. 280 - 290
Main Authors 今木, 洋大, 小金澤, 正昭, 小池, 伸介
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本森林学会 01.10.2013
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Summary:ツキノワグマによるスギやヒノキ等の植栽木への樹皮剥ぎ被害が各地で問題となっており, 対策が急務である。各地の被害現状調査とこれまでのツキノワグマの生態学的知見から被害発生メカニズムに基づく対策を講じる基盤ができつつある。本論では, 米国太平洋岸北西部における期間限定給餌プログラムを含めた総合的な樹皮剥ぎ被害対策を検証し, 両地域でのクマ類の生態および樹皮剥ぎ被害の比較により, 日本における期間限定給餌プログラムによる被害対策の可能性を議論した。日本でこれまで考えられてきた樹皮剥ぎ被害の各要因を検討したところ, これまでの研究成果および米国での研究成果と考え合わせると, 食物資源説の立場をとることで, 比較的容易に樹皮剥ぎ発生要因を説明することができる。そのため, ツキノワグマの食物環境が劣化する特定の時期に, 人為的にツキノワグマの栄養学的環境を操作する期間限定給餌プログラムは, 米国と同様に日本においても効果を発揮する可能性があると考えられた。ただしプログラムの効果を検証するための研究を先に挙げた仮説に基づき行うこと, 野生動物に対する給餌の社会的是非, 給餌の乱用防止の確認などが事前の作業として必要である。
Bibliography:870375
ZZ20018854
ISSN:1349-8509
1882-398X
DOI:10.4005/jjfs.95.280