絶滅危惧種トガサワラの優占林分における土壌深度別の外生菌根菌群集

トガサワラ林の外生菌根菌 (以下,菌根菌) の種構成や出現頻度が土壌の深さによってどのように変化するかを明らかにするため,成木の菌根と埋土胞子の種組成を調べた。奈良県三之公川のトガサワラ林内の25 地点において,四つの土壌深度区別に土壌ブロックを二つずつ採取した。二つの土壌サンプルのうち,一つからは成木菌根を取り出し,DNA 解析によって菌種同定を行った。もう一つの土壌サンプルは,埋土胞子の種組成を調べるためバイオアッセイに供試した。バイオアッセイではダグラスファーとアカマツ実生を宿主とし,育苗後にDNA 解析で菌種を同定した。その結果,成木の菌根菌の出現頻度と菌根菌種数は土壌深度が深くなるに...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published inNihon Shinrin Gakkaishi Vol. 99; no. 5; pp. 195 - 201
Main Authors 村田, 政穂, 奈良, 一秀
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本森林学会 01.10.2017
Subjects
Online AccessGet full text

Cover

Loading…
More Information
Summary:トガサワラ林の外生菌根菌 (以下,菌根菌) の種構成や出現頻度が土壌の深さによってどのように変化するかを明らかにするため,成木の菌根と埋土胞子の種組成を調べた。奈良県三之公川のトガサワラ林内の25 地点において,四つの土壌深度区別に土壌ブロックを二つずつ採取した。二つの土壌サンプルのうち,一つからは成木菌根を取り出し,DNA 解析によって菌種同定を行った。もう一つの土壌サンプルは,埋土胞子の種組成を調べるためバイオアッセイに供試した。バイオアッセイではダグラスファーとアカマツ実生を宿主とし,育苗後にDNA 解析で菌種を同定した。その結果,成木の菌根菌の出現頻度と菌根菌種数は土壌深度が深くなるにつれて減少する傾向がみられたが,菌根菌の埋土胞子は最も深い土壌で出現頻度が高くなる傾向を示した。また,埋土胞子の菌根菌はショウロ属のみが検出され,それらの感染によって苗の成長は有意に促進された。埋土胞子は攪乱後の菌根菌の感染源として重要であるが,その垂直分布についてはこれまでに報告がなく新たな知見である。さらにトガサワラも攪乱依存種と考えられており,本種の保全において菌根菌の埋土胞子を活用できる可能性がある。
Bibliography:ZZ20018854
920546
ISSN:1349-8509
1882-398X
DOI:10.4005/jjfs.99.195