冬期の遮光に伴うチャの樹体内炭水化物含量の変動が一番茶新芽の生産性に及ぼす影響

チャの樹体内炭水化物含量と一番茶の生産性との関係を明らかにするため,成木茶園において冬期の異なる時期に,遮光率85%の資材を用いて遮光(直接被覆)処理を行い,部位別の可溶性糖およびデンプン含量を経時的に測定し,新芽生育や収量・品質との関係を解析した.冬期に遮光を行わなかった場合には,光合成産物である糖の供給が十分に行われ,デンプンは2月下旬には太根,中根での蓄積が増加し,その後萌芽期までに枝部へも蓄積された.これに対し,冬期に3ヶ月(1月上旬~4月上旬)遮光した場合には,光合成の抑制により葉からの糖の供給量が不足し,太根に続いて中根や枝部でもデンプンの蓄積が遅れた.遮光時期を1ヶ月半にした場合...

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Published inJapanese journal of crop science Vol. 82; no. 4; pp. 345 - 352
Main Authors 鈴木, 利和, 一家, 崇志, 森田, 明雄
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本作物学会 2013
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Summary:チャの樹体内炭水化物含量と一番茶の生産性との関係を明らかにするため,成木茶園において冬期の異なる時期に,遮光率85%の資材を用いて遮光(直接被覆)処理を行い,部位別の可溶性糖およびデンプン含量を経時的に測定し,新芽生育や収量・品質との関係を解析した.冬期に遮光を行わなかった場合には,光合成産物である糖の供給が十分に行われ,デンプンは2月下旬には太根,中根での蓄積が増加し,その後萌芽期までに枝部へも蓄積された.これに対し,冬期に3ヶ月(1月上旬~4月上旬)遮光した場合には,光合成の抑制により葉からの糖の供給量が不足し,太根に続いて中根や枝部でもデンプンの蓄積が遅れた.遮光時期を1ヶ月半にした場合,前半(1月上旬~2月下旬)被覆区と比較して,後半(2月下旬~4月上旬)被覆区では,萌芽期における各部位の可溶性糖およびデンプン含量が減少し,一番茶の新芽生育と摘採時期の遅れ,摘芽数の減少,芽揃いの悪化が生じた.以上のことから,枝や根の炭水化物の蓄積に対しては厳冬期(1月上旬~2月下旬)よりも萌芽期前(2月下旬~4月上旬)の光合成生産の影響が大きく,萌芽期における樹体内炭水化物の不足は一番茶の収量性や品質の低下をもたらすことが明らかになった.
Bibliography:871613
ZZ00014890
ISSN:0011-1848
1349-0990
DOI:10.1626/jcs.82.345